ぽかぽか陽気の冬のある日、茨木市の白川敬愛保育園では、朝からにぎやかな動物たちの鳴き声が園庭に響いています。通りがかりの人たちも何事?と覗き込み、興味津々。準備ができたら、さあ動物たちとのふれあいの時間です!
やって来たのは、子牛にロバ、ポニーなどの大きな動物から、羊やヤギなど、そしてウサギやモルモット、小さなネズミまで、全部で25種類の動物たち。なんだ、虎やライオンはいないの?なんて侮ってはいけません。だって、この動物園では動物とふれあうことができるんです(虎やライオンがいないわけ、わかりますよね?)。ふれあいの里動物村は、子どもたちが安全に、自由に動物たちとふれあえることを大切にしている移動動物園。だから、身近な動物が中心なのです。
園児たちは順番に、いろいろな動物とふれあいます。スタッフの優しいお兄さんやお姉さんが、「これは誰ですか~?」と聞くと、「うさぎさん!」と元気なお返事。そして、「うさぎさんはね、こうやって抱っこしてあげてね」と教えてもらいます。まだ小さい子どもたちが、たくさんの動物にふれる機会は、そう多くはありません。抱き方や動物が嫌がることなど、よく知った大人がちゃんと教えてあげて、注意して見ていることが動物と子どもたち両方にとって大切なこと。
「牛さんの足はチョキをしてるね。ロバさんの足はグーだね。じゃあポニーさんの足は?グーだからロバさんと同じだね」と、じゃんけんになぞらえてお姉さんが違いを教えると、子どもたちもしっかり動物たちの足を見つめて納得したようす。こんな風に動物についても学べるのが動物村。
最近は、幼稚園や小学校で動物を飼育することが少なく、子どもたちが動物とふれあえる機会も減っていると言います。そんな子どもたちが自由に動物とふれあえることが、動物村の最大の魅力。動物を見るのと、直接さわるのとは全然違うと、動物村村長の斉藤さんは言います。珍しい動物を見るのも楽しいけれど、生き物の温かみを感じることが大切。
「ふれあうことの何が素晴しいかは、子どもたちのおこないを見ていれば、理屈抜きでわかります。動物にふれることで、相手を認めること、大切にすること、そんなことを自然に学んでくれています」。
慣れていない子どもたちは、最初は緊張して硬くなっています。そこで、先生の登場。まずは先生が率先して動物たちにふれあって見せること。ポニーに乗って「高くて、気持ちがいいよ」、羊に餌をあげながら「ほら、怖くないよ」と子どもたちの気持ちをほぐします。ヘビ(青大将)には先生だっておっかなびっくり。でも、スタッフのお姉さんがしっかり捕まえていてくれるので大丈夫。最後は子どもたちもヘビを首に巻いて、カメラに向かってニッコリ。あっという間に動物たちと仲良くなって、自らうさぎやモルモットを抱っこしたり、ネズミを肩に乗っけたり、自由に動物たちとのふれあいを楽しんでいます。
子どもたちは、動物に積極的にさわれるようになると、目をきらきらと輝かせながら先生やスタッフのお兄さんお姉さんに報告します。「この子がぼくに甘えてきたよ」、
「かわいいね」。自分より小さい生き物をかわいがり、思いやる気持ち。なかなか言葉では伝えきれない大切なことを、子どもたちは自然に感じているようす。
斉藤さんが動物村をはじめてから、およそ40年。その間、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化したと言います。だからこそ、直接動物にふれることができる機会が大切。
「動物村という名前には、ある思いを込めています。村というのは、人々が集まって暮らす単位。そこに動物たちも自然にいて、一緒に生きている。人は人だけで生きているわけではありません。だから動物園ではなくて、動物村という名前なのです」。
私たちも他の動物たちと共に生きている。普段は感じることができないかもしれない、そんな当たり前のこと。「今はわからないかもしれない。でも今日のことが少しでも思い出として残っていれば、いつかそんなことにも気付いてくれると思います」。
動物村ほどではないけれど、昔も今も私たちの周りにはいるはずの、たくさんの動物たち。そんな身近な動物たちとのふれあいを探しに、まずはおそとへ出かけてみませんか?