vol.09 目覚めよ、冒険心

遊びのなかの学び

子どものころ、おそとには冒険が待っていました。子どもにとって、遊びは生きることそのもの。OSOTOは“冒険遊び場「プレーパーク」”でのびのび生き生き遊ぶ子どもたちに、出会いました。

(文:石塚育代 写真:出原和人)


子どもたちが自由に遊べるおそとの空間

一昔前は、子どもたちが空き地や道路などのおそとで自由に遊んでいましたが、現代では、道路網の拡大、交通量や犯罪の増加など、おそとが子どもたちの遊びの場として安全で安心とは言えない場所となりつつあります。また、おそとで遊ぼうと思っても禁止事項が多く、自由とは言いがたいのが現状です。
“冒険遊び場”はそんな時代の流れにありながら、子どもたちが自由に、自分たちで作り上げる遊び場。挑戦や冒険に思いっきり挑むことができる場所なのです。例えば、火を使ったり、穴を掘ったり、ノコギリを使って木を切ったりと、普通の公園ではできないようなことがおこなわれています。なぜそんなことができるかというと、住民が主体的に運営に関わり、地域の他の住民や行政と関係を築いているから。こういった地域の人たちの支えがあり、子どもたちはのびのびと遊べるのです。

今回取材でお邪魔した「羽根木プレーパーク」と「夢パーク」にも、たくさんの子どもたちが自分で遊びを作り、見つけて楽しんでいました。その一部を紹介したいと思います。

挑戦と冒険の遊び場『羽根木プレーパーク』

今年で32年目となる“羽根木プレーパーク”は、日本初の常設冒険遊び場です。ここには、“自分の責任で自由に遊ぶ”をモットーに、毎日たくさんの子どもたちが遊びにきています。通常、冒険遊び場には、 “プレーリーダー”がいます。プレーリーダーは、子どもたちと一緒に遊んで、遊びの大切さを伝え、一緒になって遊び場づくりをし、ときには話も聞いてあげる重要な存在です。でも、「危ないからあれはしてはいけない」というようなことは言いません。あくまでも遊び仲間として、子どもたちが自由に遊べるようにサポートするのです。
「土台となる骨組みだけをプレーリーダーと世話人(地域の人)で作っておくと、その数日後には基地作りに発展していたり…」と世話人の斉藤さん。取材に行ったその日も、小さな子どもたちがノコギリを使って一生懸命木材を切って、何かをつくっていました。きっと子どもたちの頭のなかには立派な基地の完成図が描かれているのでしょう。基地だけでなく、川までも子どもたちの手作りです。思ったとおりにできなくても、自分で木材を切るところからつくったり、穴をほったりすることは、わくわくするような冒険に違いありません。プレーパークには、大きな木にぶら下がっているブランコやシーソーなどもありますが、今でも子どもたちは基地や川を作り続けています。立派な基地もあれば作りかけで止まっている基地もあり、子どもたちの個性が感じられて微笑ましいもの。

はしごはなく、木に縄が張ってあるだけ。それでも、子どもたちは木を登り、綱を渡ります

ツリーハウス/大きな子は登れるけど、小さな子は登れないように、階段の2段目の幅が大きく開いています

自分たちが掘って作った川に水を流しています。水は上手く流れるかな?

見よう見真似で板に釘を打つ子も。何が出来上がるのでしょう・・・

ここでは木に登り、自分たちで作った川で水遊びをし、大人と同じ道具を使って自分の作りたいものを作るのが日常です。子どもたちは昨日も今日も明日も、毎日挑戦と冒険を繰り返し、成長していくのです。

世田谷区代田4-38-52 羽根木公園内
TEL/03-3324-9284
10:00~18:00
毎週火曜定休

“やってみよう”がたくさんある『夢パーク』

子どもたちの“やってみたい”という気持ちを大事にし、“やってみよう”がたくさんある場所が『夢パーク』。子どもたちは、パーク内にあるものを使って、自由な発想で“考える”“つくる”“壊す”を繰り返して遊びを生み出していきます。
夢パーク内では、“火”を使用することもできます。プレーリーダーに言えば、マッチと新聞紙がもらえるので、決まった場所でなら焚き火もできます。「アルミ缶を溶かして型にはめ、ペンダントを作ったり、釘を焼いて叩いたり、ベーゴマを焼いて硬くしたりと子どもたちの考えることにはいつも驚かされます」とプレーリーダーのテッペイさん。ベーゴマは硬くするとベーゴマ同士がぶつかったとき火花を散らすので、より迫力のあるバトルが楽しめるそう。これも、夢パークでの世代を超えた交流によって、遊びを通して学び、実践していることのひとつです。

取材に行ったこの日はとても暑く、子どもたちはスライダーからすべり降りて、水遊びを楽しんでいました

基地にペンキを塗ったり、屋根の上に上ったり、過ごし方は様々

ここでは、小学校低学年の子が中学生とサッカーを楽しんでいたりと、学校では知り合わない世代間の交流がさかんにおこなわれています。遊びを通してつながりが生まれ、たくさんの出会いのなかで子どもたちは自分らしさを見つけていくのです。“近所のお兄さん・お姉さん”との交流も子どもたちの成長には大切なこと。お兄さんやお姉さんから様々な遊びの手ほどきを受け、さらに下の世代へと脈々と受け継がれているのです。

自分たちで一から考えて工夫してお店をつくり、当日は自分たちで販売をする“こどもゆめ横丁”。上限70円と金額設定もする本格的なもの

ここでしか味わえないドラム缶風呂ではしゃぐ子どもたち

神奈川県川崎市高津区下作延 5丁目 30番地 1号
TEL/044-811-2001
9:00~21:00
毎月第3火曜定休

“自分の頭で考えて、自分の体で行動する。自分の力を知り、少しずつ挑戦を繰り返す”。遊びのなかで感じるドキドキが、子どもの冒険心をくすぐって、「今日は何して遊ぼう!」と家から飛び出したくなる。そして、その冒険心をさらに倍増させてくれるのが、冒険遊び場です。ハラハラすることもあるかもしれませんが、子どもの力を信じることが大人のできること。子どもたちの冒険を見守るのが、大人にとっての冒険と言えるかもしれませんね。


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