動物とのふれあいは、古くから癒し効果があるとして様々な病気の治療に取り入れられています。中でも注目なのはホースセラピー。心と体の健康だけでなく、地域コミュニティ形成の場としても盛り上がりを見せているのが、枚方セラピー牧場。牧場を訪れ、運営しているホース・フレンズ事務局
理事長の芦内さんにお話をうかがいました。
馬とふれあうことがセラピーになるなんて、なんだか楽しそうだと思いませんか?ホースセラピーの一番の特徴はその「楽しい」という気持ち。餌やりやブラッシングをしたり、馬房の掃除をしたり、一緒に牧場内を散歩したり、そんな“馬とのふれあい参加プログラム”に、乗馬とは異なる楽しみがあるのです。
「馬は、人と同じように五感が発達した動物です。人が生き生きと心を込めて接すれば、馬にも伝わるんです」と芦内さんは言います。馬は、ブラッシングをすると、うっとりと気持ち良さそうに目を細め、名前を呼ぶと声の方に近づいて来ます。そんな馬たちのそばにいると、自然に何かしてやりたいという気持ちが湧いてきます。自分の疲れた心や不安な思いなど、どこかに飛んでいってしまい、思いやりや優しい気持ちが心の底から生まれてくるのです。
実際にこのプログラムを体験して、長年の引きこもりから社会復帰したという人もいるんだとか。馬の世話をすることで自信を取り戻し、今では別の場所で馬の飼育を仕事としているそう。
「馬に対してあこがれの気持ちを持っていたのでしょうね、かっこいいって。馬ってそんな気持ちを抱かせる動物なんです」。
おそとへの第一歩を踏み出すきっかけは、そんなささいな気持ち。そんな思いを大切にしてくれる場所が、このセラピー牧場なのです。
牧場の中心には、木々が茂る芝生スペースがあります。決して広くはないけれど、木陰で休むことができるだけでほっとした時間を過ごせます。
「芝生のベンチに腰掛けて、お弁当を食べたり、のんびりするためだけに来る人もいますよ」と芦内さんが言うように、牧場には他にも花壇やたくさんの鉢植えが置かれ、心安らぐ空間になっています。その豊かな緑は、スタッフやボランティアさんたちの協力の賜物。花を育てるのが好きな人が花壇の手入れを、美術を学ぶ学生さんが飼料など入れているコンテナに絵を、近所の方が時間がある日にはちょっと掃除でもという風に、いろいろな人がそれぞれできる範囲で協力してこの快適な空間を提供しています。自分たちで緑豊かな快適空間をつくるそんな活動を、セラピー牧場では“小さな森づくり”と呼んでいます。
「緑があるということは、とても気持ちがいいことです。それぞれの趣味や特技を生かして参加する“小さな森づくり”なら、街の中でもできることだと思います」と芦内さん。みんなでつくる小さな森が街中に広がれば、緑の成長とともに、人と人との豊かな繋がりの環も育っていくに違いありません。
最近新たに取り組んでいるのが“食”のプログラム。その秘密は馬の糞。そのままだと不要なものとして処分されてしまうのですが、発酵させて土に混ぜると栄養満点のボロ(馬糞)堆肥として、おいしい野菜を育てるみなもとに。スタッフやボランティアの方々が牧場の一角で育てた野菜は、隣接する関西医大病院の栄養士さんにわけて欲しいと言われるほど、緑の濃い元気な野菜たち。そんな野菜を使ったオーガニックカフェが、この春、牧場の隣にお目見え予定とのこと。馬がいることで、食の循環という新しい環も回りはじめているようです。
次々に広がる活動の秘訣は?
「楽しいと、楽しいアイデアが浮かぶんです。外で体を動かしていたら、脳も働いてくるんでしょうね」。
そう話す芦内さん。傍らにそっと寄り添う馬と彼女の笑顔が、その充実感を物語っています。
馬を中心に、生き生きとした人の環が着実に広がりつつある枚方セラピー牧場。優しい馬たちに会いたくなったら、ぜひ訪れてみて。癒しの環への入り口はいつでも開かれています。
牧場利用料 | |
当日会員(3歳以下無料) | 300円/日 |
ジュニア会員(中学生以下) | 500円/月 |
学生会員(高校生以上) | 1,000円/月 |
一般会員 | 2,000円/月 |
※全てのプログラムには予約が必要です。料金別途。 |