フリーマーケットやファーマーズマーケットなど、おそとでのお買い物が、最近、変わりつつあります。お買い物の楽しみに加えて、「本当に欲しかったものはこれかも?」と思えるカタチのない価値も得られる仕組み。そこには、明るい未来を予感させる企画する人たちの様々な想いがあり、同じ想いを持って集まった人たちとのコミュニケーションが生まれています。そんな新しいスタイルのマーケットへ、この春、出かけてみませんか?
(取材・文/いなだみほ 編集/福田アイ)
兵庫県川西市で、2009年から毎年春と秋におこなわれている「おうちでフリマ」。こちらは、同市で雑貨店を営む道田聖子さんによる、素敵な暮らしを応援するプロジェクト「つばめリンク」が主催するイベントのひとつ。販売している商品がリサイクル・リユースのモノのみという新しいカタチのフリーマーケットです。これまでのフリーマーケットとは違い、イベントに参加する市内(と一部、猪名川町)の家々が自宅の庭やガレージをマーケットとして一斉に開放します。買う人々がイベントマップを片手に、まちをぐるりと巡り歩くというスタイルもオリジナル。
「実はアイデアのベースは、スウェーデンなんです」と道田さん。毎年夏、雑貨の買い付けのためにスウェーデンの田舎町をまわっていたところ、首都のストックホルム郊外で自宅の庭やガレージを開放してフリーマーケットをしている家々に出会ったのだそう。「『売って儲けるぞ!』というのではなく、『気に入ったものがあればどうぞ』という感じの、のんびりとした雰囲気がいいんです。それにモノを大切にする国らしく、長い期間丁寧に使われてきたことが分かる家具や食器、布地などがあるのも素敵でした。そういう、モノが新しい使い手に渡り、また愛用されていくという習慣に刺激を受けたんです」。
道田さんがスウェーデンで出会ったフリーマーケット。使い込まれたカゴや色合いのきれいな布地、食器などがアイテムごとに分類されています。
物語のワンシーンのような雰囲気のこちらは、まちの集会所。スウェーデンではこういう場所を利用して頻繁におこなわれています。
そんなスタイルを地元で実践して4年。「このイベントをはじめて、改めてまちを散策してみたのですが、Uターンの私も、生まれ育ったまちの居心地のよさを心から実感しています。地元のハウスメーカーも地域活性化につながると賛同してくださって、マップ作成に加えて、開催日の巡回や警備などに協力してくださるようになりました。それに、回数を重ねるごとにイベントに参加してくれる地域の人たちも増え、県外からわざわざ訪れてくれる人もあらわれるなど、イベント自体が広がりを見せています」。
雨の場合は、庭にキャンプ用のテントを張って。会場まで荷物を運ばなくてよいのも、「おうちでフリマ」ならでは。
商品の展示にはテーブルや車を利用。アクセサリーや小さな雑貨を空き箱に小分けするなど、それぞれのお宅で工夫を凝らしています。
現在の出店者はお子様を持つ30代、40代の女性が中心。小さな子どもの洋服や玩具、靴などは、「リユースに最適」とかなりの評判のよう。また、この地域に長く暮らす年配者とも交流を深めるきっかけ作りに「おうちでフリマ」が一役かっています。「ご年配の方が販売するものはレトロテイストで、若い方には新鮮だったりしますしね。そういった世代を超えた交流が生まれることも、このフリーマーケットを開催しているからできることです」と道田さん。訪れる人も、地域の人たちも、売ったり買ったりするなかでリサイクル・リユースができている楽しさを感じる。そして、まちの魅力を発見・再発見し、新たな出会いが地域のつながりへと発展する…。そうすることで、昨日より心地いい日々がはじまりそうです。
おうちでフリマ開催情報
日時:2013年5月11日(土)、12日(日)
場所:川西市(一部、猪名川町)
URL:http://aj-design.jugem.jp(開催内容の告知はblog「アネヒル日記」で)
http://mocohouse.co.jp(イベントマップの閲覧は「モコハウス」のHPから)