がんばらないで健やかに

なんだかよく分からないけれど、気分がよくない。疲れている。不安だ。それはあなたが、がんばり過ぎて、知らないうちにどこかで無理をしているからかもしれません。そこで、がんばらなくても健やかに毎日を過ごせる方法や考え方を探しました。すると、おそとが、とても大きな役割を果たすことを発見!おそとへぶらりと出かけて気軽にはじめられることや健康観が変わるかもしれないお話などを、知って、試せば、体も心もスッキリするはず。さあ、健やかに、いきましょう!
(取材・文/森田香子 イラスト/小山 健 編集/福田アイ)


からだクリエイトきらくかん 代表・奥谷まゆみさんのお話

 まずは、体を読み、使い方を伝えて、不調を改善させることに努める整体サロン「からだクリエイトきらくかん」の代表・奥谷まゆみさんにお話を伺いました。体と心のことを学んだうえで、心を変えたいなら、体を変えたほうが早いと説く彼女によると、私たち現代人は、がんばらなくてよいところをがんばり、がんばったほうがよいところは、がんばっていないようですよ。それでは、奥谷さんの考える、がんばる方法とは?

頭はがんばらない、体はがんばる

 私のもとを訪れる患者さんのなかにも、体や心の不調を訴える方がたくさんいます。そういう方に共通するのは、普段からあれこれ考え過ぎて、頭は、がんばっている。だから、頭が、すごく疲れている。逆に、肉体は疲れていないということ。体を動かす習慣のない人がほとんどなのです。体をしっかり使っていないと眠りが浅くなるから、布団に入っても、考え過ぎる。考えているだけだと解決しないことが多いから不安になる。不調を来たす。実は、おもしろいことに、体って疲れるくらい動かさないと元気にならないんですよ。ちゃんと使って、負荷をかけてあげることで、調子が良くなる。また、体を動かさないとエネルギーが余るので、それを人間は無意識に発散しようとします。その一番手っ取り早い方法が悩むこと、不安や恐怖を感じること。それが脳でエネルギーを最も消費する行為だからです。だからこそ、必要なのは「頭はがんばらない、体はがんばる」ことではないかと思うんです。

そうすると、運動でエネルギーが消費され、余分なエネルギー量が少なくなる分、脳は優先順位をつけて効率よく働こうとするので、今、考えていても答えが出ないことと、出ることにちゃんと振り分けられて、無駄に悩み過ぎず、考える前に行動するというシンプルな思考になってきます。結果、心のモヤモヤも早くリセットできます。心と体はワンセットなんですよ。だから、心がモヤモヤすると感じたら、まずは「自分は体を動かしているかな?」と問いかけてみてください。

日常の動きをちょっと変えることから

 体を動かすことで一番のおすすめは、歩くことです。簡単で道具も不要、場所も選ばない。それに人間の体を維持するのに最低限必要な動きが全て含まれている完璧な運動だからです。歩く距離や時間の目安は、夜眠るときにしっかり肉体疲労を感じる程度。理想は毎日ですが、無理だったら月に1、2度でもいいので、いつもより遠くまで歩いてみるなど、体をクタクタになるまで動かしてみてください。体をしっかり使うようになると、心にも変化が表れます。

とはいえ「面倒で…」という気持ちはわかります。それは怠け者でも何でもなくて、人間らしさですから自然なこと。仕方ありません。そんな人は、外出時に、いつもより大股で歩くとか、いつものストレッチを少しきつめにするとか、掃除機をオーバーアクションでかけてみるなど、日常の動きをちょっと変えることからはじめてみましょう。基本的には自分の好きな動きでOKです。運動の好き嫌いに関わらず、誰にでも自分の体にしっくりくる、好きな動きがあるので、それをぜひ探してみましょう。スポーツは苦手でも、ダンスの動きは大好きだったなんて発見があるかもしれませんよ。

おそとに出ることも、健やかにつながっている

 屋外で活動することにも、良い効果があります。屋外へ出ると誰もが必ずといってよいほど、遠くを見るので、自然と視線は斜め上方向に上がりますよね。実は視線と脳は関係が深く、視線を上げるだけで、人間は明るい気持ちになるようにできているんです。それに屋外では、室内にいるときより呼吸が深くなるうえに、他人の目を意識する分、適度な緊張感があるので余分なエネルギーを消費します。自然と体にそういう変化が起きるのです。だからがんばって頭を使って心がモヤモヤしている人は、家で体を休めてリラックスするよりも、とにかく屋外に出てみることです。ベンチなどに座っておにぎり一つを食べるだけでも、気持ちのリセット効果はあるんですよ。

 私の考える“健康”って、病気をしないとか、いつも笑顔でいることよりも、「嫌なこともあるけど、生きていてうれしいな」と思える心身を持っていることです。だけど、いくら「明るく考えようよ」と言っても、人の心は簡単には変えられません。逆に体はちょっとした運動で、ちょっと変えられます。体をがんばって動かしてエネルギーを使い切れば、毎日ちゃんと疲れて眠ることができる。これは人間が古代からおこなってきたこと。そんなごく当たり前のことが、何があっても「大丈夫!」と思える、健やかでハッピーな心身につながっていきますよ。


奥谷まゆみさん

1964年東京生まれ。10余年のOL生活の後、心理療法の勉強をスタート。その後、体の調子が心につながっていると気づき、NPO法人「気道協会」にて長谷川浄潤氏より整体を学ぶ。1994年より整体指導をはじめ、1998年に開業。後に、体の使い方を指導する現在のスタイル「からだレッスン」を考案。指導を通して「体は動かすことで正常に機能する、動かさないと使えなくなる」という原点に立ち返ることを促している。自身も約3年前に運動を再開したことで、不調の原因が運動不足による余剰エネルギーにあることを発見。ここ1年はフラダンスに熱中し、大好きなフラを汗だく&笑顔で踊ることで、改めて心と体の健康を実感している。著書に、『おきらく整体生活』(ちくま文庫)、『からだが教えてくれたこと~きらくかんの整体日記~』(からだクリエイトきらくかん)など多数。近著に『クタクタ☆ハッピー ~現代人を救う究極の健康法~』(からだクリエイトきらくかん)がある。

からだクリエイトきらくかん公式サイト


» http://www.kiraku-kan.com


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