8月22日~10月12日までの52日間に渡り開催される『水都大阪2009』。このイベントのメインプログラム「水辺の文化座」に、土谷享と車田智志乃によるアーティストユニット・KOSUGE1-16が参加します。彼らが考える水辺の過ごし方とは? 3つのport(港)に分けられたプロジェクトについてうかがいました。
市内に水の回路が巡らされ、その回路を利用しながら様々な産業が発展した大阪。こうした“水の都・大阪”の魅力を伝えようと今年開催されるのが『水都大阪2009』です。メイン会場となるのは、アーティストによる参加型プログラムを連日開催する「水辺の文化座」。KOSUGE1-16もこの文化座で、これまでの活動でも取り上げてきた「スポーツ」を題材に、プロジェクト『KOSUGE re-port ~ボートを待ちながら~』を立ち上げます。
企画の軸は、アートを通して“もちつもたれつ”という関係を生み出すこと。「スポーツにおける“クラブ”という要素をアートに取り入れたいんです。プレーする人、見る人、支える人、全員がプレイヤーだという考え。僕らの参加型アートはそこを目指している。だから、通りすがりの人にも参加してもらえる仕掛けを作りたい」。果たしてそれが実現したとき、会場にはどんな空気が流れるのでしょうか?
“もちつもたれつ”を生み出すために彼らが用意するのは3つのport。まず1つ目は巨大サッカーゲームを使って地元リーグを作る「AC-中之島」。参加者は、プレワークショップでゲームを組み立てることからはじめ、子供たちは選手人形を作ったり、店や企業は会場のADボードスポンサーとして参加できます。さらに、スポンサーから集めた資金で中之島リーグを開催。会期中に試合を重ね、チャンピオンチームまで決める一連のプログラムです。
2つ目は使い古されたスパイクやサッカーボールを再生させる「Skin Project」。ここでは事前に大阪の青年サッカーチームに声をかけ、彼らに靴磨きを教える代わりに、履き潰したスパイクを回収。それを解体し、大阪発祥とされる雪駄(せった)や、キーケースなどの新たなアイテムを制作・販売するもの。来場者はワークショップとしてアイテム作りを体験でき、その参加費や売上げの一部がサッカーチームに還元されます。アートと地域のゆるやかなフェアトレード。どちらのportも、“もちつもたれつ”の関係で成り立つようになっているのです。
そして3つ目が、彼らにもどうなるか予測不能という「水辺のスポ研」です。
「僕らの最もコアな部分」と土谷さんが言うように、「スポ研」はKOSUGE1-16の主軸的な活動。これまで何度も実施されてきましたが、水都大阪では地元8団体を巻き込んでおこなわれます。
各団体と水辺で暇な時間を過ごしながら、そこにあるもので暇つぶしの遊びを考え、ルールを作り、試しにプレーしてみる。そうしてルール改善と試作プレーを繰り返しながら、徐々に新たなスポーツを形作ってゆく・・・。それは、まるで子どもの遊びの延長のようなもの。最終的には幾つかを水辺のスポーツと認定し、「水辺の遊びカタログ」を制作、それを実行する「水辺の遊びフェスティバル」も開催します。
「何がどうなるか分からない(笑)。というより、用意して行くんじゃだめなんです。その場を感じながら作らないと」。ここにはアートを通したおそとの無限の可能性が秘められています。「僕らのアートはそもそも美術館に納まるように考えてない。最初からおそと的なんです」。さらに「外なら何の目的もない人がふらりと来るかもしれない。特別な場所じゃないというのが面白い」とも。
何が起こるか分からない状況をプラスに変えるアートの力。そんな状況を彼らと一緒に楽しんでみてはどうでしょうか?
土谷享と車田智志乃によるアーティストユニット。東京・小菅を拠点に、主にスポーツをモチーフにしたアートプロジェクトを発表している。
「水の都・大阪」発展のシンボルイヤーである2009年に、川と生きる都市・大阪の復興を伝えるイベント。「アートで人と人をつなぐ」をコンセプトに、様々な企画が開催される。
8月22日~10月12日まで。