暮らしに緑を 部屋からまちへ、そして森へ

暮らしに緑を 部屋からまちへ、そして森へ

大阪ステーションビルが新たに開業し、最後の一等地と言われる北ヤードの整備が進むなど変化が著しい大阪市の“キタ”エリア。ここに2011年4月に誕生した「アーバングリーンラボ」の活動を紹介します。


市民のためのまちのラボ

アーバングリーンラボがあるのは、都市にそびえる高層ビル「大阪富国生命ビル」。このビルには通常のオフィスだけではなく、21世紀型の情報発信基地として、5階には大学のサテライトキャンパスが、4階には社団法人テラプロジェクトが主宰する「まちラボ」があります。「まちラボ」は、食と植をキーワードに、市民と大学・企業が手を携えて“モノつくり”と“コトつくり”に挑戦する、市民に開かれた実験工房。企業や大学が知恵と技術、ネットワークを生かして、中心課題である“心身健康”の実現に向け、新しい製品やシステムづくりを研究する場所なのです。私たち市民は、展示やワークショップ、講座に参加して、最新技術を体験したり、知識を深めたりすることができます。ここでは、参加者のニーズや感想をダイレクトに研究に反映させることで、より実社会に根ざした成果を導き出すことが期待できるのです。
現在まちラボに参加している企業は8社。“植”の観点からアプローチしているのは、株式会社竹中庭園緑化が主宰する「アーバングリーンラボ」。壁面緑化や照明と一体型になった植物、プランターがビルドインされている本棚など、至る所にグリーンが配されたこのラボでは、都市で生きる人に対して、暮らしに緑を取り入れる様々な提案をおこなっています。

プランターがビルドインされている本棚

照明と一体になったプランターもオリジナル

まちの緑の楽しみ方

アーバングリーンラボは、誰でも、いつでもふらりと立ち寄ることができる、緑に囲まれた都市のオアシス的存在。緑に関する書籍も充実していて、自由に閲覧可能なので、ちょっと一休みに訪れるのもおすすめ。

ラボの壁にある緑に囲まれたMAPには、梅田周辺で見られる緑の情報が貼られています。これは“みんなでつくろう!梅田のミドリMAP!”という取り組み。「建物ばかりのような梅田ですが、意外に緑があるんです。壁面緑化など新しい技術を使った緑も増えていますよ」とは、ラボスタッフの冨士本八央さん。たくさんの人が見つけた「こんな緑があったよ!」という情報を集めてMAPにすることで、まちの緑を知り、大切にするきっかけにもなりそうです。

「緑がそこにあればいい、ということではなく、まちのなかで今までとは違う緑化のアプローチをしたい」話してくれたのは、ラボを運営する竹中庭園緑化の松井正樹さん。その言葉のとおり、ラボを飛び出しておこなったのが、水都大阪フェス2011でのリバーサイドピクニック。グラウンドなどで使用されるロール芝を使って、ユニークな“芝生のお茶の間キット”を提供しました。固い舗装の上に置かれた4畳半の芝生スペースには、来場者もびっくり。絨毯のようなマットに芝生を植えたロール芝は、土が落ちる心配がありません。その利点を生かして室内での育成を実験中でしたが、それならイベントなどでの一時的な利用も可能なのでは?と考えてできたのがこのキット。芝生のうえでお弁当を広げたり、ちょっと腰かけたり、靴を脱いで上がりこんだり、お茶の間キットがあることでまちにくつろぎの風景が出現しました。お茶の間キットは、ただそこにあるだけの緑ではなく、「使える緑」としての緑化の新しい提案と言えそうです。

書籍は、東京の書店“ユトレヒト”によるセレクト。大きな絵本やベランダ菜園の本などセレクトがユニークです

これからミドリMAPにたくさんの情報が集まるのが楽しみです

子どもも大人もワンちゃんも(!)思い思いに“芝生のお茶の間キット”を楽しんでいる様子。本物の芝生はやっぱり気持ちいい!

森への入り口

まちの緑だけではなく、森との関係を考えているのが“Mori Mado/森窓”。森林管理の支援や地域から産出される木材の流通の仕組みづくりをおこなっている NPO法人サウンドウッズと共同で実施している“森とまちをつなぐ”取り組みです。10月におこなわれた1回目の勉強会では“暮らしの中の木と森の勉強会”と題し、割りばしなど、身近にある木材についての勉強会をおこないました。果実酒やむかご、どんぐりクッキーなど森の恵みをいただきながら、国産材がどのように使われているか勉強しました。そこから学んだのは、健全な森を保つには、定期的な手入れや間伐が欠かせないということ。「間伐材などの森の資源を上手にまちで使い、森の手入れに必要な費用を森に還元する。つまり、森林資源の上手な利用を提案することが元気な森づくりに役立つと考えます」と松井さん。その提案のひとつとして実施したのが昨年のクリスマスツリー。間伐材を組み合わせたエコツリーに、松ぼっくりとアカマツの薄い板でできたシックなオーナメントを飾りました。間伐材から爽やかな香が漂い、「森へ行って、もっとこの清々しさを味わいたい!」と感じずにはいられません。また12月の2回目の勉強会では、実際に森歩きのイベントも実施。3回目の勉強会では、森からやってきた木を使って、ラボでカトラリーを手作りします。

勉強会では森の恵みを味わいました。エコツリーは清々しい香りとシックな装いがおしゃれ

身近なまちの緑に気づかせてくれたり、新しい緑化を提案したり、森の恵みを利用する大切さを教えてくれるアーバングリーンラボ。緑を介して、部屋とまち、部屋と森をつなごうとしているまちのラボを、あなたも一度覗いてみませんか?

Open 10:00~20:00(木曜日18:00)
定休日:日曜日・祝日・年末年始・夏季休業日(イベント開催時除く)
大阪市北区小松原町2番4号 大阪富国生命ビル4階・まちラボ内
TEL:06-6311-1188
E-mail:info@uglab.jp


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