vol.01 水辺

(撮影地:大泉緑地)

摘み菜を伝える会 - これからが楽しい季節、秋の摘み菜。

摘み菜とは、草や木、海藻など身近な食べられる植物をちょっと摘んでいただくだれでもできる楽しみです。
そんな“摘み菜を伝える会”を大阪で主宰している平谷けいこさんは、’95年から活動をスタート。今では日本全国にその輪は広がっています。秋のある日、摘み菜を楽しむ平谷さんとお孫さん、そして摘み菜仲間の牧野トミヨさんを訪ね、誰でも、そして今日から真似したくなる、その楽しみ方をうかがいました。

(文:森瑞穂 写真:大坊崇)


じつはおいしい!野生の木の実を食べてみよう。

「摘み菜というと、春の風物詩のイメージが強いかもしれないけれど、四季を通じて楽しめるんです。秋もまた、絶好の季節なんですよ」。

摘み菜好きのお母さんに連れられ、5歳のころから、摘み菜を楽しんでいたという平谷さん。ふだん何気なく目にしている雑草や木の実のなかに、じつはとてもおいしいものが隠れているのだと言います。摘み菜のジャムやお茶など、各人が作ったものを持ち寄って、ちょっと摘んだ摘み菜とともに、皆でワイワイと食べる時間も、欠かせない楽しみのひととき。

「緑地にある草原や森のような一角。それも摘み菜に適した自然なんですよ」。

この日は、おいしいどんぐりである、マテバシイやスダシイの実、大きなアカメガシワの葉などを発見。公園のテーブルに、素敵なテーブルコーディネイトが完成しました。そんな、摘み菜の心得と、秋に楽しめる身近な摘み菜の見分け方を教えてもらいました。

摘み菜の心得

ムクノキ。黒く熟したものは、甘くておいしい

クズの葉は、摘み菜茶にしたり、お皿にしたり

こんなにたくさん木の実がとれました

キンモクセイの花の砂糖漬けとクワの実のジャムをヨーグルトと一緒にパンにつけて

1. 摘み菜はあくまで、手で摘めるものを摘む、というところがポイント。他の人、また次の年のためにも、できるだけ根ごと採ることはしないで。食べるぶんだけちょうだいして、無駄にしないよう心がけましょう。

2. 持ち物は、ビニール袋4~5枚。わざわざ出かけるのじゃなく、散歩や買い物の途中にも楽しめます。バンダナをふたつ折にし、両端を2ヶ所のベルト通しに結べば、即興のポケットにも。また、水を入れたペットボトルや水筒と、手ごろなサイズの蓋付容器を持って行くのもポイント。そうすると、その場でちょっと洗って食べるのに便利です。

3. 春の摘み菜は生でサラダにして食べたりして楽しみますが、ジャムなど、保存すればより長く楽しめる秋の摘み菜もまた楽しいもの。シイの実などは、生でもおいしいが、煎ったり、茹でたりして食べると更においしい。

秋の摘み菜

スダシイとマテバシイの見分け方と食べ方

スダジイの実。まだ殻斗にしっかりおおわれていました

スダシイは、殻斗かくと(ぼうしのような殻)を全てかぶった実。熟して殻斗が割れているものが食べごろ。中身をとって茹で、粉にしてお団子を作ったり、ナッツのようにクッキーに入れてもおいしく食べられます。

マテバシイの実は、実の底がへこんでるのが特徴

マテバシイは、実の底の部分がふくらまず、へこんでいるどんぐり。栗ほどは甘くないけれど、野生のおいしさ。

アカメガシワの葉のお皿

アカメガシワの葉のお皿に木の実をのせて

アカメガシワの葉は、古代からお供え物をのせるのに使われていました。私たちも先人の知恵にならって、お皿として使ってみましょう。葉を2枚あわせて、赤い葉柄をかごのように結んでお皿に、葉っぱを切り絵のように切ると、まるでレースペーパーのような、とってもかわいい即席のコースターになります。切れ端は無駄にせず煎ってお茶に。

摘み菜茶

季節ごとの味わいがある摘み菜茶

この日の摘み菜ブレンド茶は、葛の葉、エノコロ草の葉と穂、びわの葉、よもぎの葉や茎の入ったもの。ほうじ茶のような、ハーブティーのような野の香りのおいしさ。葉は3種ほど入れると、味に深みが出て、それぞれの味も感じられるので、おいしくいただけます。作り方は、新鮮な葉をさっと洗って乾かし、油っけのない厚手鍋で弱火で煎ってからお湯を注ぐだけ。簡単でしょ?

摘み菜のゆたかな幸せは、身近なおそとに。

 驚いたのは、子どもたちもパクパクと、木の実や摘み菜の味を抵抗なく楽しんでいたこと。
「自分で見つけに行く最初の段階から関わって、食べるところまで、というのがいいのでしょう。私がそうだったように、小さなころ慣れ親しんだものは、ずっと心に残ります。買ったものばかりじゃなく、身近な自然で味わえる豊かさ。おそとで食べる楽しさを、だからこそ多くの人に楽しんでみてほしいですね。それに、子どもたちにとっても、木の実であればつぶしてもいい遊び道具になるでしょう。「にがい!」「しょっぱい!」って味わったり、自分の手で触れて感じてみるという体験が、心をゆたかにするのではないでしょうか」。

おそとで&みんなで味わうおいしさとあわせて、素直に笑顔がこぼれる時間。

「そう、摘み菜って、身近な幸せなんです」。
あらためてとても新鮮なおそとの楽しみ方、発見です!

平谷ひらやけいこ…’95年から“摘み菜を伝える会”の活動をスタート。
今やその会員数は日本全国で200人。会報『摘み菜』は季刊発行。著書に『摘み菜がごちそう』(山と渓谷社)、『四季の摘み菜12ヶ月』(山と渓谷社)、『ゆげの摘み菜』(愛媛県弓削町)がある。

会報『摘み菜』や平谷さんの著書購入のお問合せは、摘み菜を伝える会事務局へ、メールかFAXでお問合せ下さい。


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