TOMIMOTRAVELさん,小森利絵さん

日常という枠から外へ飛び出して、積極的な旅をしていますか?自分で計画をして、自分の頭で考えて、人とふれあう積極的な旅は、他人任せの旅よりも、かなり楽しい!そして、より濃い思い出を作ることができます。さらに、その経験からもたらされる日常への良い効果は、積極的な旅の方が断然大きい!つまり、旅は、積極的であればあるほど、自分にじわじわ効いてきます。この醍醐味を知らない人がいたら、もったいない!そこで今回は、3つのパターンで積極的な旅を取り上げて、旅が、どんなふうに自分に効くかをご紹介しましょう。読んだあとに旅をしたくなったら、近くであっても遠くであっても、思いきって飛び出してください。そして、自分の世界を広げていきましょう!
(取材・文/小森利絵 撮影/大塚杏子[からもも] 編集/福田アイ)


積極的な旅の第一歩は、
“恥”をかき捨てることから!?

旅先で見知らぬ人に話しかけ、交流をする。これは、他人任せの旅であっても実践できる積極的な旅の第一歩といえるでしょう。そうはいっても、「恥ずかしい」「不安だ」という人のために、ある試みをおこないました。どんな外見であっても、どんな問いかけであっても、積極的に話しかければ、その分だけ濃い思い出を得られ、自分に効く旅になるのではないか。そんな考えを検証するために、『TOMIMOTRAVEL』のバスガイドさんと旅をしました。

このバスガイドさんは、見失ったバスを観光地で探し続け、出会う人たちに「私のバスはどこですか?」と問いかけて7年目となる異色の存在。非日常を誘う観光地で、輪をかけた非日常をもたらしています。そんなバスガイドさんが「バスがあるかも」と噂に聞いた、世界遺産・高野山(※)へ!同行して検証するのは、小豆島の旅で数々の旅の効果を得られたものの、見知らぬ人に話しかけることへ不安を抱くライターの小森利絵さん。さあ、話しかけることに正反対の性格を持つ二人によるワンデイトリップのはじまりです!旅の効果もバスも見つかったのでしょうか?

※和歌山県の北部に位置し、山全体を一つの大きな寺と考える日本仏教の一大聖地。弘法大師(空海)によって開かれ、2015年に開創1200年となる。2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として、ユネスコの世界文化遺産に登録。信者の方々や四国八十八カ所巡りを終えた“お遍路さん”をはじめ、世界中から参詣に訪れる人が絶えず、優れた観光地としても名高い。

TOMIMOTRAVELさん,小森利絵さん

 旅先で「こんなことを聞いてもいいかなあ」「反応されなかったら、どうしよう」と不安…。特に、海外では「英語をあまり話せないし、交流なんてできない!」など思ってしまい、聞きそびれてしまうことがある私、小森利絵が、ショッキングピンクの制服を着て、「私のバスはどこですか?」と書かれた旗を持つといった目立つ格好のうえ、ハーフでモデルのように綺麗なTOMIMOTRAVELのバスガイドさんと旅へ出ました。「どんな外見であっても、どんな問いかけであっても、積極的に話しかければ、その分だけ濃い思い出を得られ、自分に効く旅となるのではないか」という考えを検証する“バス探し”の旅です。

 TOMIMOTRAVELのバスガイドさんの目的は“バスを探すこと”。だから、ガイドはしません。時々観光もしますが、ガイドブックを持たず、ノープランで彷徨。出会う人たちに「私のバスはどこですか?」と声をかけます。なので、突然質問された人は、一瞬「?」な表情になり、「何を言っているんだろう?」「どういうことだろう?」と、様々な「?」が頭に浮かぶようで…。そんな反応をされると、私だったら「やっぱり、こんな質問したら、ダメだったんだ」とめげそうになりますが、バスガイドさんはその反応も想定済み。

 例えばお坊さんには、「私のバスはどこですか?」のあとに、「バスが高野山にあると聞いてきました!仏の力で探していただけませんか?」など謎めいた質問を続けたり、駅員さんには、「おすすめの場所はありますか?」「大通りに出るには、どのバスに乗ればいいですか?」などの行き先に関する質問などに切り替えたり。

 なかには困惑したまま去っていく方もいましたが、「どのバスに乗っているの?」「団体旅行ですか?」「何かの撮影ですか?」など、バスガイドさんの状況を理解しようと質問を返してくれる方が想像以上に多くて、驚きました。最終的には「よくわからないけど、おもしろいなあ」と笑ってくれたり、「そうなんですか」と半信半疑ですが、一応納得してくれたり。

 カメラが趣味の年配の男性に「おとうさんは何を探していますか?」と話かけると、「何も探していない。あほやから」との答えから話が発展して、最後は一緒に記念撮影も。

 おかしな質問であっても、それをきっかけにして、理解しようとして下さる相手からの質問が生まれるため、コミュニケーションがより深まることもあると判明!

 バスガイドさんは、「私のバスはどこですか?」という質問以外にも、「あれはなんだろう?」「気になる!」と思うと、その疑問や興味をきっかけに、どんどん話しかけるタイプ。例えば、各所入口に飾ってある半紙のような白い紙で作られた切り絵が気になるねと話していると、うどん屋さんで「あれは何ですか?」とバスガイドさんが店員さんに質問。そこから『吉祥宝来』という高野山発祥の伝統的な切り絵だと教えていただき、高野山では米を収穫できず、藁でしめ縄を作れないため、この切り絵で代用したという話を聞くことができました。また、“こうやまき”を売る屋台も気になったバスガイドさんは、「高野山名物の食べ物かもしれない」と屋台の人に質問。食べ物ではなくて、仏壇や墓に供える植物と知ることもできました。

 疑問や興味を持ったときにどんどん話しかけるからこそ、その土地ならではの情報をすぐに得られることをバスガイドさんの行動から教わりました。

 この旅で最も長く話しかけた方は、高野山駅から中心部へ向かうバスに乗車した際に出会った年配の女性。旅のプランもガイドブックもないため、バスに乗ったものの、どこで降りようかと迷っていたとき、近くに座っていたその方にバスガイドさんはすかさず話しかけました。「どこに行くんですか?」「おすすめの場所は?」「お昼ごはんを食べるなら?」など質問攻め。あまりにも熱心だからか、カバンから高野山の観光パンフレットを取り出して、いろいろ教えて下さったほどでした。

 例えば、高野山の信仰の中心である奥之院では、弘法大師が「禅定(ぜんじょう)」と呼ばれる瞑想に今もなお入られていると考えられていることや、弘法大師御廟(ごびょう)の手前に架けられた御廟橋を境にしてこの世と霊域が分かれていることなど、聞いているだけで「なんと神秘的!」と想像が膨らむ話をして下さいました。おすすめの場所は朱色の根本大塔(こんぽんだいとう)。見せていただいたパンフレットの表紙を飾っていた胎蔵大日如来をご本尊としている仏塔なのだそうです。昼食なら、奥之院前バス停近くのうどん屋が「なかなか、おいしかったよ」と。そのほか、英語は話せないけれど、外国人旅行者が困っていると声をかけて案内することや、アメリカに憧れていた青春時代の話までして下さいました。そして、これから奥之院へ行かれるとのことだったのでご一緒させていただくことに!

 奥之院では、御廟橋の前で礼拝と合掌をしてから、橋板一枚に対して一歩ずつ前へ進むといったことをはじめ、お参りの方法をレクチャーして下さいました。弘法大師が永遠の禅定をしている御廟では、ろうそくのゆらめきのなかに弘法大師の肖像が見えることなども。案内して下さったからこそ知ったことがたくさん!途中で別れてからも、その方のおすすめの場所を巡り、6時間ほどかけて高野山を満喫することができました。

 バスガイドさんが探しているバスについてですが、残念ながら、手掛かりさえも掴めませんでした。けれども、バスガイドさんからは、積極的な旅の心得をしっかり学ぶことができました。それは、不安がらずに、なんでも聞いてみることが大切であること!話しかければ、自分が聞きたかったこと、知りたかったこと以上のことが得られるという経験ができました。それによって、その場にしみじみ浸ることもできました。

 旅に出たからこそ、出会えた人がいて、行けた場所があって、だからこそ、興味を持てることが増えたことも旅の効果であると知ることができました。例えば、弘法大師(空海)ですが、取材を進めるにつれて、今回の「旅が、じぶんに効く!!」のすべての記事に秘かにゆかりのある人物になっていきました。旅の達人・木藤さんがシルクロードを旅された話の際に空海の修行の地について語られ、小豆島の旅では弘法大師が立ち寄ったとされる小豆島八十八カ所の霊場に触れることができ、さらに、この高野山でのできごとが加わり、一連の旅を終えると、弘法大師への興味は膨れ上がり、関連する展覧会へ行くほどに!お遍路さんにも興味が出てきました!そうやって、旅のできごとが、日常のなかに広がりをみせている今、積極的な旅によって、これまでの自分の枠を越えられたと感じています。

\ところでバスガイドさんに質問です!なぜバスガイドをしているの?/

実は、今回お世話になったバスガイドさんは、アーティスト“トミモとあきな”さんによるパフォーマンス。その名称が「TOMIMOTRAVEL」です。つまり、「TOMIMOTRAVEL」という旅行会社は実在しません。トミモとあきなさんが京都の観光名所である銀閣寺の二軒隣に住んでいたとき、銀閣寺に訪れる観光客が、ガイドブックに掲載されている写真と同じ風景を見たり、同じ写真を撮ったりするだけで満足する姿を見て「もったいない!」と思ったことが「TOMIMOTRAVEL」をはじめるきっかけになりました。「多様な感じ方や考えを持った人たちを同じ目的地へ連れて行く団体旅行バス。バスガイドは、そんな人たちと観光地をつなぐ重要な存在です。そのバス旅行では、多様な人たちの出会いと交流、知識や情報の交換、それらの融合があるからこそのおもしろさがあります。そんなおもしろさが、旅先はもちろんのこと、現代社会においても見失われているのではないか…」。そこで、バスガイドの昨今の減少を危惧して、“バスを探すバスガイド”というパフォーマンスを2008年にスタート。“バスガイド”に扮する理由は、観光旅行に限らず現代社会に問題提起するためなのです。

TOMIMOTRAVEL公式サイト
»http://www.tomimotravel.com/


  • ハプニングあり、ミラクルあり。小豆島・坂手の旅日記

旅は好き。でも、これまで自分で計画をしたり、現地の人とふれあったりする旅をしてこなかった。そんな人は、一度、積極的な旅をしてみませんか?そこで今回は、そんな人のひとり、ライターの小森利絵さんに、旅のスタイルを変革し、自分への効果を探究する1泊2日の旅を計画&実施してもらうことにしました。行き先は、瀬戸内海に浮かぶ香川県の小豆島(しょうどしま)。旅の1日目は完全フリー、2日目は地元の人おすすめの坂手エリアを散策する、ふれあい型観光体験ツアーへ参加というプラン。同行するお友だちは、国内外の旅経験が豊富なFunnyさん。さてさて、小森さんは積極的な旅をすることで、自分への効果はあったのでしょうか。旅日記とともに伝えてもらいました。それでは、「じぶんに効くツアー」のはじまりです!

  • 続きを読む
  • 旅の達人に聞く積極的な旅とその効果

まずは、すべてにおいて積極的な旅をされているお二人にお話を伺いました。ひとり旅歴が60年になる70代のバックパッカー、木藤(きどう)浩之さん。そして、グーグルアースとフェイスブックを駆使する、かずみみゆきさん。お二人とも旅の目的はコミュニケーション!そして、旅好きな方も圧倒されるほどのユニークな旅を謳歌されています。それぞれの旅からは学ぶことがたくさん。まさに旅のエキスパート!!読めば、120%自分に効く旅ができるようになるかもしれません!

  • 続きを読む

  • OSOTOトップへ
  • 全ての記事一覧