「日本人サイズの日本製」にこだわり、ハンドメイドで自転車を作り続けているEngineered Bike Service(E.B.S)の代表・小林宏治さん。大阪で唯一E.B.Sの自転車を販売している西区土佐堀のショップ「velo life UNPEU(ベロライフアンプ)」には、スマートでありながら個性的なフォルムの自転車たちが並んでいます。交通手段としてだけじゃない、ちょっと素敵な自転車のお話です。
(文:松井瑞穂 写真:大坊崇、※はEBS提供)
E.B.Sの自転車が作られているのは、京都にある自社の工房。「特徴は、日本人サイズの日本製自転車ということ。軽くて強い上質のスチールを使うことで、使うごとにしなりが出て、快適に走ることができます。スポー ツ自転車のような快適さと耐久性を持ちながら、街なかでも走りやすい自転車を目指しています。そうすることで、暮らしを豊かにする道具としての自転車の可能性を、もっと広げたいんです」と小林さん。たとえば“WORK”というタイプは、一般的な自転車と比べて荷台の位置が低く、サイズも40センチ×70センチと大きい。E.B.Sでは、ギア付自転車では今まで無かったセンタースタンドも開発されていて、自転車を安定して停車することができます。荷台を板張りにすれば、何と、テーブルとして使えるんです。
小林さんはさらに、自転車で持ち運びできる木製の組立て椅子を考案。WORKタイプの荷台テーブルとセットで、どこでも、走ってでかけたその場所がピクニック空間になるという、自転車を通じた新しいおそとの楽しみ方を提案しています。
小林さん自身、ふだんから、家族で自転車に乗って公園に出かけては、家で作ってきたごはんを食べたり、マットを持参してごろごろしたりして、おそとの楽しみを味わっているのだとか。「冬でも、おうちで煎れたあたたかいコーヒーを持って、公園で楽しみたいですね。自転車は、都会のなかの自然を楽しむ、そのアクセス方法として優れています。そのことを、乗るご
とに実感していますね。これすごい自転車ですね、なんて声を掛けられることも増えて、コミュニケーションツールとしても楽しいですよ」。また、ご自身にお子さんが誕生したことで感じた「子どもを自転車に乗せなくなってからも、ずっと乗り続けられる自転車がほしい」との想いから、“LEAF-LONG”を開発。チャイルドシートを前にも後ろ乗せ仕様にもできるこのタイプは、実際に小林さん自身が街で乗ってみてストレスを感じた点などを解消し、より生活に沿った自転車へと改良を重ねた、時間をかけて仕上げられたもの。チャイルドシートがいらなくなったら、親がスポーツ車として楽しんで、その後はまた子どもに…。「愛着を持って、手入れして、親子代々乗り続ける、一生ものの自転車に乗りたい」そんな想いに共感する人から、注文が増えているそうです。
お客さんの要望から新しいアイデアが生まれ、これまで世の中になかったオーダーメイドの自転車もつくってきました。例えば、移動カフェ式自転車。かねてから親交のあった
“graf” (家具、空間、グラフィック、イベントなど様々なクリエイティブ活動をおこなう集団)がデザインし、E.B.Sが 制作しました。2009年に大阪市の中之島公園で開催された「水都大阪2009」へ出店するために作られたものです。荷台に備え付けられたカーボン素材のボックスにジュースやコーヒー、ときにはワイン、スイーツなどを積み、自転車のある場所がどこでもカフェやバーになる仕組み。このイベント以降も、さまざまな場所に出張して、出会った人たちを楽しませています。
これまで様々なかたちで、自転車の可能性を広げてきたE.B.S。小林さんは、おそとならではの楽しみがある自転車を通じて、暮らしをより快適で楽しいものにするための新しい商品も開発中だとか。これからもどんなアイデアがかたちになっていくのか楽しみです。
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