爽やかな気候で過ごしやすくなる秋には、新しいことをはじめたいという意欲が高まるのではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが、空にまつわる趣味。空気が澄む秋は、空のベストシーズンといわれています。空が高く感じられると、雲の様々な形がはっきりと見え、星は輝きを増します。抜けるような青い空を、鳥のように飛びたいと望む人も多いことでしょう。そんな秋の空を楽しむことから、新しい趣味をはじめてみませんか?もちろん秋に限らず、空は季節ごとに異なる表情を見せます。また、見上げれば、いつも雄大です。そんな空に魅了され、趣味として楽しんでいる方や趣味が高じてプロとして活躍する方にご登場いただき、対象への想い、趣味としての魅力、楽しみ方、そして一人で味わう喜びや仲間と共有する喜びなどをお聴きします。それぞれの方が夢中になるポイントを知って、あなたなりの空を手に入れてみませんか?
(撮影/坂上正治 編集・文/福田アイ)
大阪市内で星空を観望できるカフェバーを営む山口圭介さん。星空の楽しみ方を幅広い知識と技能で案内する「星のソムリエ®」の資格を持ち、その日の星空をプラネタリウムで解説したあと、屋上でおこなう観望会では星の位置を案内しておられます。その解説をネタに出場した一人話芸日本一決定戦「R-1ぐらんぷり」では一回戦を突破。お笑いと星空案内の融合というオリジナルのジャンルを確立させるなど、趣味が高じてというよりは趣味の延長として自らも貪欲に星を楽しんでおられるとのこと。そこで、山口さんに、星の魅力や楽しみ方、さらには、「まちなかで星を案内するのが僕のテーマのひとつ」とのことから、都心で観望するための心得をお聴きしました。都心でたくさんの星は見つけられないと思っている方は、ぜひとも読み進めてください。
星を嫌いな人はたぶんいないと思うんですよね。そんななかで、星は、どんな人に対しても、何かしらのワクワクさせる部分を持っていて、どんなふうにも楽しめると思うんです。そこが魅力でしょうか。
それこそ、観望して綺麗と思うことも楽しみになりますし、綺麗と思う星の光が、なぜ光っているのか、なぜこんな色をしているのかと科学的な見方で楽しむのもいいし。その星で構成されている星座を見つけることも楽しいし、それには神話があって、物語があってと、文化的な楽しみ方もできます。
星を楽しみたいからといって、星が綺麗でよく見えるところへ行かなければいけないわけではないんです。楽しむのに、何が一番良いか、ということはないと思うんですよね。楽しむ方法を限定しないでほしいとよく言っているんですが、これだというやり方はないので、自分なりの楽しみ方がわかればいいと思っています。
僕の場合は、神話を主にして星空を案内することがすごく楽しいですね。誰かにその星の物語などを話して、いっしょにワクワクしながら観望したりとか、話をして空を見上げた人がそれで喜んでくれたりとか。そういう部分がすごく楽しいんです。知的好奇心をくすぐると、その瞬間の相手がワクワクしているリアクションは僕にも伝わってくるので。
今度はこんな話をしようと思って、それについて深く調べたり、こういう星を見せてあげたいからこういう機材を揃えようとしたりとか。星空案内は、パフォーマンス的な部分があるので、どういう話の組み立てで話したら、もっと星に興味を持たれるとか、どういう順番で案内したら、一番感動を大きくできるかとか、そういう部分を考えるのもすごく楽しいです。
ただし、本当に星が綺麗なときは、特に案内されたいと思わないだろうから、聞かれたら答える程度です。できるだけ静かに、しゃべらないようにしますね。
観望に限っていうと、「見えない」という思い込みを捨てることです。大阪市内でも、びっくりするぐらい見えるときがありますから。「こんなまちなかで星なんか見えるわけがない」と思っていたら、そもそも見上げることすらしないですよね。見えるか見えないかは見てみないとわからない。
「ここでも見えるかな」と見上げてみたら、ひとつふたつと見えることはあるんです。それらを観望しているうちに、だんだん目が慣れてきて、他の暗い星も見えるようになってきます。思っているよりも星が見えはじめるようになるまで、結構時間がかかるものです。そのあと、その星の名前や何座かを調べていたら、どんどん見える星が増えてきます。お店の観望会で最初は5個だけだった人が、20、30個まで見えるようになって帰られることもありますから。
1度見つけてしまえば、見つけやすくなって、毎日星が見えますし、見える星を増やしていけば、見上げ続けるだけで、どんな街にも星を増やしていけるんです。やっているうちに見方のコツがわかってくるものなので、コツを掴むにしろ何にしろ、まずは見上げてみること。
星1個でも見えたら、僕の場合は、その星の性質などについて話ができてしまうほど価値を感じるので、「1個しか見えないな…」とつまらなく思ってしまうんじゃなくて、その1個でどこまで楽しめるかというのは大事ですね。
山口圭介さん
星カフェ®SPICA
宙(そら)ガールなどの天文ブームを牽引しているといえる、星をまちなかでカジュアルに楽しめるカフェバー。限界まで暗くした店内は、壁、天井、床、テーブルまでもがプラネタリウムによって星空に。毎日開催される観望会では、山口さんが壁に映し出された当日の夜空を解説。その後、屋上で肉眼、双眼鏡、望遠鏡を使って観望。建物があるため、何も障害物がない広い空とは違って星の動きがよくわかり、まちなかならではの楽しみ方もできる。フードやドリンクにも星を楽しめる工夫をちりばめ、あらゆる方向から星の世界へ誘ってくれることも人気の理由といえる。「ここへ来たお客さんが新しい楽しみ方に気付いたり、これから自分で発見してくれたりしたらいいなと思いますね」と山口さん。予約をしてから来店を。
住所 大阪市中央区松屋町4-18 JitsuwaBLDG 5F
電話 06-6777-4066
営業時間 18時~24時
定休日 火曜
サイト http://cafespica.com
雲の景色のなかに点景(車、人など)などのワンポイントを入れ、ドラマ性のある雲の世界「雲の情景」を撮影する写真家の甲斐順一さん。「雲の情景」を専門に撮影して約20年となり、その間に趣味が高じてプロに転身されました。現在は、いつでも撮影できるように、カメラを離さず、シャッターチャンスを狙う毎日を送られているそうです。そこで、雲とともに生活する甲斐さんだからこそ熟知している雲の魅力、甲斐さんなりの楽しみ方、そして写真を楽しむコツや撮影のコツを教えていただきました。また、甲斐さんの公式サイトにアップされている写真からOSOTOが選んだベストショットもご紹介します。