爽やかな気候で過ごしやすくなる秋には、新しいことをはじめたいという意欲が高まるのではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが、空にまつわる趣味。空気が澄む秋は、空のベストシーズンといわれています。空が高く感じられると、雲の様々な形がはっきりと見え、星は輝きを増します。抜けるような青い空を、鳥のように飛びたいと望む人も多いことでしょう。そんな秋の空を楽しむことから、新しい趣味をはじめてみませんか?もちろん秋に限らず、空は季節ごとに異なる表情を見せます。また、見上げれば、いつも雄大です。そんな空に魅了され、趣味として楽しんでいる方や趣味が高じてプロとして活躍する方にご登場いただき、対象への想い、趣味としての魅力、楽しみ方、そして一人で味わう喜びや仲間と共有する喜びなどをお聴きします。それぞれの方が夢中になるポイントを知って、あなたなりの空を手に入れてみませんか?
(撮影/村東剛 編集・文/福田アイ)
パラグライダーよりも飛行中の自由度が高い「パラモーター」は、エンジンを取り付けた椅子と一体型のプロペラを背負って座り、パラグライダーと同様のパラシュートに空気を取り入れ、自分で操縦して空を飛ぶことができるスカイスポーツ。1980年代の登場以来、エンジンの小型化など様々な面で改良が重ねられたことで、趣味として楽しむ男性が増え、最近では女性のパラモーター人口も増えつつあります。そこで、滋賀県近江八幡市にあるパラモーター専門ショップ「MKクラフト」に女性の会員、中原恵さんを紹介していただき、お話を伺うことにしました。中原さんは、パラモーター歴1年。神戸から車で約1時間半かけて、ショップが持つフライトエリアへご主人と毎週通っておられるとのこと。実は高所恐怖症。にもかかわらず、ご主人のスクールに付き添ううちに、「飛行するチャンスがあるのにチャレンジしなかったら、自分が棺桶に入るときに後悔しそうな気がして」と同スクールへ入校。そして一度ひとりで飛んでみたところ、思わぬ魅力に惹きつけられました。今は「とにかく上手に飛びたい!」と、完璧な飛行を目指して猛特訓中。そんな中原さんが感じるパラモーターやその飛行の魅力、仲間との楽しみとはいったいどのようなものでしょうか。
パラモーターは30キロほどあるエンジンを背負って、キャノピーというパラシュートを立ち上げて安定させてから、走って、エンジンを回転させて飛び立ちます。安定させることが最初の訓練ですが、早い人だと毎週通って1、2ケ月でできるようになり初飛びができます。初めて誰の補助もなしにひとりで飛び、ひとりで降りて来ないといけないし、慣れるまで、飛ぶときは無線の指示に従うのですが、それも初めて。私は勇気がなくて、初飛びまでに半年かかりましたが(笑)。
パラモーターの特権は、平らなところから飛んで、平らなところに降りて来られること。どこでも可能というわけではありませんが、学校のグランドほどの広さがあって、風が安定していて、法律の許される範囲内や社会的なルールを守れば、自由に飛ぶことができます。
人によって楽しむ目的は様々で、私はひとりで自由に飛べるようになったら、主人と一緒に全国に点在するフライトエリアへ遠征して、日本の綺麗な景色を空から見てみたいですね。他の目的としては、スポーツ的にアクロバット飛行をしたい人もいれば、綺麗な景色を空撮したい人もいたり。好きな高度で飛ぶことが可能なので、雲の上まで飛んで雲の匂いを嗅いだ人もいます。世界記録では7000メートル上空まで飛んだ人がいるそうですよ。低空飛行を好む人もいて、足元に景色がサーーーッと流れるそうですが、それはヘリコプターや飛行機では不可能なことですよね。
二足歩行のヒトとして生まれて、初めて自分ひとりで空を飛んだ記念すべきその瞬間は「気持ちいいーーーーーー!」って叫んでいました。今までの恐怖感は何?と思うほど。本当に「楽しいーーーーーー!」という気持ちで、全身からアドレナリンとか、あらゆるホルモンが、ゆるキャラのふなっしーが梨汁を出すときみたいにブシャーと出て、もう全開(笑)。初飛びは恐怖よりも気持ち良さが勝って、すっごい笑顔でした。
パラモーターをやっている人には私と同じように、観覧車やジェットコースターに乗れない高所恐怖症の人が多いんですが、飛んでみると、いきなり空!となるし、遮るものがないからか、座って吊られているからか、不思議と恐怖感はないようですし、私もなかったですね。高所恐怖症とは別モノだと思いました。
飛んでいる最中は、まさに鳥。景色を見ることに関しては高い建物に登って見るときと変わらないかもしれませんが、自分ひとりで操縦しながら、囲いのないところで、空気に触れながら飛んでいることが鳥になった気分になれるんだと思います。鳥のなかでも、トンビだと私は思うんですね(笑)。トンビは羽ばたかず、ゆったり旋回していますよね。だからトンビを見たら、「あなたの気持ちがわかるよ」と思うようになりました。
パラモーターをはじめてからの日々の変化は思いっきりあります。職場で小さいことでイライラとしたら空を飛びたい、あのアドレナリンがバーッと出る快感を味わったら、スッキリするやろなと思いますね。とにかく、これまで小さい世界でグズグズ思っていたなと感じますね。
スクールの校長が「空を一度飛ぶと、他が物足りなくなる。この趣味はいろんな趣味をされてきた人が最終的に辿り着くところで、これ以上も、これ以下もない」と最初に言ってましたが、私は、それがなんとなくわかりますね。実は、20歳のころから、バイクでツーリングをする趣味を続けてきて、1800ccのハーレーに乗っていたんですが、パラモーターとは楽しさのレベルが全然違うんです。鳥のように飛んで鳥肌の立つような快感を得られることは、まるで一種の麻薬のようで、他では物足りないんです。
パラモーターをする人は、ちょっと個性派揃いですね。最終的にこの趣味に辿り着く人が多いからか、シルバー層が多いのも特徴です。MKクラフトは、比較的平均年齢が若いそうですが、最高齢は80代。職業や地位をみると多種多様。といっても、ここでは肩書きを捨てて遊べます。それに、パラモーターを専門にするところは日本でも少ないから、福井県や和歌山県、名古屋市といった遠方から集まって来られていて、会話もお土産も(笑)楽しみです。
みんな、上達したいと思って、課題を克服するために練習している人ばかりで、朝10時から夕方4時までフライトしています。少し飛んではしゃべって、また少し飛ぶという感じで、風や天候が悪くて飛べないときは、ショップのなかで、みんなでウダウダしゃべって、和気あいあいです。MKクラフトの良さは、仲間。馬鹿笑いもできるほど仲良くなれます。いい年した大人が馬鹿笑いってなかなかしないでしょ(笑)。
中原恵さん
MKクラフト
1996年にスタートした全国的に珍しいパラモーター専門のショップ&スクール。「琵琶湖があるから平らな土地があり、良い風が吹き、風が安定して、空が広く、MKクラフトがある」とスタッフが語るように、琵琶湖からの恵みを得られるアクティビティのひとつとしてパラモーターを採用したとのこと。会員が自由に飛行できるフライトエリアは、常に一方向の風が吹く好条件の場所を選択。地上訓練や上空訓練に加え、危険を回避するためのスキルの習得や安全に飛ぶための講習会も開講していることから全国から受講者が集まる。インストラクターと一緒に飛ぶフライトも用意されているので、空を飛びたくなったら、まずは体験から。
住所 滋賀県近江八幡市安土町下豊浦 5125-4(ショップ)
電話 0748-46-5654(ショップ)
090-8930-5544(校長・真藤)
サイト http://mk-craft.jp
大阪市内で星空を観望できるカフェバーを営む山口圭介さん。星空の楽しみ方を幅広い知識と技能で案内する「星のソムリエ®」の資格を持ち、その日の星空をプラネタリウムで解説したあと、屋上でおこなう観望会では星の位置を案内しておられます。その解説をネタに出場した一人話芸日本一決定戦「R-1ぐらんぷり」では一回戦を突破。お笑いと星空案内の融合というオリジナルのジャンルを確立させるなど、趣味が高じてというよりは趣味の延長として自らも貪欲に星を楽しんでおられるとのこと。そこで、山口さんに、星の魅力や楽しみ方、さらには、「まちなかで星を案内するのが僕のテーマのひとつ」とのことから、都心で観望するための心得をお聴きしました。都心でたくさんの星は見つけられないと思っている方は、ぜひとも読み進めてください。
雲の景色のなかに点景(車、人など)などのワンポイントを入れ、ドラマ性のある雲の世界「雲の情景」を撮影する写真家の甲斐順一さん。「雲の情景」を専門に撮影して約20年となり、その間に趣味が高じてプロに転身されました。現在は、いつでも撮影できるように、カメラを離さず、シャッターチャンスを狙う毎日を送られているそうです。そこで、雲とともに生活する甲斐さんだからこそ熟知している雲の魅力、甲斐さんなりの楽しみ方、そして写真を楽しむコツや撮影のコツを教えていただきました。また、甲斐さんの公式サイトにアップされている写真からOSOTOが選んだベストショットもご紹介します。