フリーマーケットやファーマーズマーケットなど、おそとでのお買い物が、最近、変わりつつあります。お買い物の楽しみに加えて、「本当に欲しかったものはこれかも?」と思えるカタチのない価値も得られる仕組み。そこには、明るい未来を予感させる企画する人たちの様々な想いがあり、同じ想いを持って集まった人たちとのコミュニケーションが生まれています。そんな新しいスタイルのマーケットへ、この春、出かけてみませんか?
(取材・文/井口啓子 編集/福田アイ)
東京の表参道の交差点からすぐ、ビルの谷間の空き地がなにやら大勢の人でにぎわっています。実はこちら、「246COMMON Food Carts&Farmer's Market」(以下、「246COMMON」)という期間限定の常設マーケット。「青山って都心の真んなかで、ファッショナブルなまちというイメージもありますが、実はちょっと入ると住宅地なんです。買い物に来る人もいれば、普通に住んでいる人もいるし、お仕事で毎日通っている人もいる。いろんな人がいろんな目的で集まるまちなのに、そういう雑多な人たちが交われる場所って意外になくて。かつての商店街のように買い物がてら、気さくな会話が楽しめる場所があれば…」と、全国でカフェ事業を展開する会社「カフェ・カンパニー」が、2012年夏に遊休地を利用して誕生させました。
パン、野菜、果物、スイーツ、ハンバーガー、珈琲、花などの生鮮品から、眼鏡、シューズ、キセルといった日用雑貨まで…。バラエティに富んだ品揃えは、なるほど“商店街”ですが、パンが天然酵母の手作りだったり、珈琲が知る人ぞ知る自家焙煎のものだったり、全国の猟師さんから直送されるジビエを使った料理、ニューヨーク・ブルックリンスタイルのポテトフライとジンジャーエールのダイナー(簡易食堂)があったり、ここでしか出逢えない店のスペシャル感は、やはり青山ならでは。店構えも極彩色のキッチュなトレーラーハウスあり、ツリーハウスを思わせるウッディなモバイルショップあり、それぞれに個性的で、ぶらぶら散策していると異国の市場に迷い込んだような非日常気分が味わえます。
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全国展開の「WIRED CAFE」も、ここではこんなトレーラーカーで。屋外とはいえグリーンや家具を配して、屋内のお店以上にお店らしいリラックスができる雰囲気です。
そんな「246COMMON」の運営に携わっているのが、同じ青山の国連大学前で毎週末に「ファーマーズマーケット」を手掛けている面々。「生産者と生活者の失われたつながりを再生し、相互理解のもとで、より良い農業と食生活を楽しめるように」というコンセプトのもと、約3年前から生産者直売スタイルを展開しています。そんな名物マーケットのお墨付きだけにここも売り手と買い手の距離が近いショップばかり。歩いていると「こんにちは」と声がかかり、「これ何ですか?」「これはこうやって食べるとおいしいよ」なんてやりとりが自然に生まれてきます。
そもそも遊休地を含む空き地は、使い道が決まっていないことから、もっといろんな使い方ができるはず。震災以降、都市におけるコミュニティを見直そうという声が高まるなかで、セミナーやワークショップ主体のコミュニティスペースではなく、屋外マーケットという、よりオープンな場所が生まれたことは、注目したいところ。PR担当の伊原志津子さんは、「カフェ感覚で、お仕事の間に一息ついたり、待ち合わせに利用したり。思い思いに過ごすなかで自然につながりが生まれたら嬉しいですね」と話してくれました。正月の餅つき大会や星空観測など、地域密着型のイベントも定期的に開催され、遠方からの人も地元住民も満足させる場となっていることも、青山という流行発信地ならではの試みといえそうです。
246COMMON Food Carts&Farmer’s Market開催情報
日程:2014年3月までの期間限定で毎日オープン。店舗はシーズン毎に一部入れ替え予定。
時間:11:00~22:00 無休(店舗により営業時間、定休日は異なる)
場所:東京都港区南青山3-13
URL: http://246common.jp