屋外マーケットへの出店を希望している人は多いはず。どんなスタイルでも、もちろんOKですが、芯のある自分ならではのスタイルのほうが、想いが伝わりやすく、コミュニケーションも深まるので、より楽しめます。そこで、まちで見かけたオリジナルスタイルの出店者を紹介しましょう。自分から動いてお客さんに近づけることを一番のメリットにして楽しむふたり。彼らから学んで、この春、新しいスタイルで出店してみませんか?
(取材・文/福田アイ)
大正時代に日本で発明された二輪の荷車、リアカー。「一番よいところは、こっちから自由に動いて行けるところですね」と話すのは、今では懐かしいリアカーを自転車のサイドにつなげて手作りのおにぎりを販売する「青おにぎり」の細川徹さん。「おにぎりは、リアカーと同じで懐かしい思い出を呼び起こすものですし、サイズや販売量も含めて、リアカーで販売するのにぴったりだと思っています」。
リアカー販売だけでも目立つこのご時世に、「移動販売は、見た目が7割」という考えのもと、細川さん自身が店名に含まれる青を基調とした和風の服装というのも特徴。彼のような個性的ないでたちも、屋外で出店する際の一種のスタイルといえるでしょう。また、行商の許可証(※)を取得しているので、屋外でイベントが開催されていると聞けば会場へ向かったり、雨の日でもアーケードや屋根のある場へ移動したりと、好きなところで販売ができるのが強み。
「リアカー販売でのデメリットは思い浮かばないですし、ほかの人もやってみる価値はあるはずです。リアカーの保存の意味も込めて、これからもっと増えていくといいなと思います。そしたら、まちが楽しくなりますから。以前商店街で、かき氷屋さんとお弁当屋さんといっしょに並んで販売したことがあって、それは本当にちょっとしたマーケットみたいでしたね」。まち全体をマーケット会場と見立て、あちらこちらで目にするリアカー販売を想像したら、胸が躍ります。そんなわくわくするまちが現実となるように、オリジナルのスタイルで出店をしてみませんか?
青おにぎり
鉄釜で炊いたごはんと、昔ながらの鮭や梅などをはじめ、“油あげオカカ”や“クリームチーズたらこ”などの独自の具材も揃うおにぎりを、京都市内で移動販売中。「会えたらラッキー」という声が多く聞かれるが、実はその日の移動先はTwitterでつぶやかれているので要チェック。
実店舗もあり、こちらでは握りたてを味わうことができます。
»http://www.aoonigiri.com
古くて大きなトランクを開けてマーケットで商いをする「uloko(ウロコ)」さん。ulokoとは、鱗のことであり、彼女にとっては商品のこと。「あたり一面に落ちている鱗は、いらないもの。でも、よく見ると一片一片はキラキラと輝いてきれい。だから拾い集めて自分なりの価値を見出せたら…」という想いで名付けたのだとか。骨董市やアンティーク店でのお買い物が好きで、大好きなものを入れたくなる宝箱のような四角の箱も、旅も好き。そんな彼女が「お店を持ちたい」「何か表現をしたい」と思い、そのためには、「自分から動いて、みんなに見てもらおう」とはじめたのが今のスタイル。「開いた瞬間に自分の世界が広がる」トランクに、買い集めた古いものを詰め込んで、マーケットへ出店しています。
さらに、商品には“自分なりの価値”として、個性的な詩を添えて、ドラマティックな出会いを演出。例えば、真っ赤な薔薇一輪が描かれた小皿には、【深紅のこころ】と名づけて、[あなたにあげる 真心かしら 邪心かしら]と添える。「言いたいことは、下心と上心(!?)、どっちかなんて分からない。天使も悪魔もみんな持っているもんね、ということなんです」と。
「大人になっても、夢見がちなところがあって(笑)。詩を付けると、ものが生き物に近い感覚になるというか、新たな生命が宿る。宿らせることもおもしろいですし、ものというよりも、人との出会いと同じような感覚で買ってもらえたらいいなと思っています」。 出店スタイルに決まりはありません。マーケットを自分なりの表現の場として考えれば、新しいスタイルがますます生まれそうです。