なんだかよく分からないけれど、気分がよくない。疲れている。不安だ。それはあなたが、がんばり過ぎて、知らないうちにどこかで無理をしているからかもしれません。そこで、がんばらなくても健やかに毎日を過ごせる方法や考え方を探しました。すると、おそとが、とても大きな役割を果たすことを発見!おそとへぶらりと出かけて気軽にはじめられることや健康観が変わるかもしれないお話などを、知って、試せば、体も心もスッキリするはず。さあ、健やかに、いきましょう!
(取材・文/小森利絵 撮影/大坊 崇 編集/福田アイ)
がんばらないで健やかになるために、体を動かす方法はたくさんあります。そのひとつとして、樹林気功を紹介しましょう。人と人、人と自然とが、癒し合う素晴らしさを知り、心身を健やかにするための、気持ちのよい気功法です。伝え手である藤田雅子さんにお話を聞き、教室を見させていただきました。
「『私が!私が!』と自分のことで頭がいっぱいだったり、『もっと、こうなりたい』と“もっと”と思い過ぎたり、『これも、あれも違う。今度こそ』と探し続けたりすること、それが、がんばるってこと。がんばるって、我を張ることだから、疲れちゃうんですよ」と藤田さん。樹林気功は、他の人や木を中心に自然と交流することによって、知らず知らずのうちにがんばらないようになっている気功です。そして『私はこんな人間だけど、それでも大丈夫』と思えるようになる。その状態が「健やか」ということ。では、一体どうしたらそうなれるのでしょうか。「どういう気持ちでやるかによって、変わってくるんですよ。例えば、2人1組になって体をほぐし合うのですが、そのとき、自分勝手にほぐすのではなく、相手に寄り添い、話しかけ、気持ちよいところを確かめてあげながらおこないます。すると、相手も不思議と同じような気持ちで交流できてくるので我を張る必要がなくなります。そして、気持ちがおおらかになり、どんな人も、どんな自分もOKって思えるようになるんですよ」。“樹林”という言葉には、植物や微生物、昆虫、動物など、いろんな生命が健やかに生きる“豊かな森”のイメージが込められているそうです。そんな樹林を、自分のなかに広げていく。みんなのなかにも、広がっていく。そうすると、健やかな世の中になると思いませんか?
藤田さんは、地元の三重県で教室を開かれています。教室では、室内で2人1組になって体をほぐし合う「癒し合い」を中心に、天候がよい日は公園や森に出かけて、自然と交流することもあるそうです。そのほか、通常の教室とは別に、緑豊かな森へ気を味わいに遠出する「観気行」もあります。そこで、教室を拝見。今回は、OSOTOのために特別な内容でおこなっていただきました。室内と公園で、基本的な気功法を取り入れた「人との癒し合い」+「自然との交流」の2本柱です。
まず、室内で気功をはじめる前の「体ほぐし」。自分の手のひらを揉んだり、2人1組で足の裏やふくらはぎをほぐし合ったりして、気の流れを整えます。「どこが気持ちいい?」と聞き合いながら、楽しくおしゃべり。自分が揉んで「気持ちいい」と言ってもらえるとうれしいし、そう伝えることが「ありがとう」の代わりになっている気がします。次に、近くの公園で「癒し合い」を。腕や背中をほぐし合います。
続いて、何箇所かに移動しながらの気功。木も、人と同じで、個性があるため、いろんな木と向き合って、それぞれの個性を体感します。基本的な気功のポーズはありますが、天地(上下)に軸が通っている感覚さえ持っておけば、自然とそのポーズになってくるので、最初から「こうじゃなきゃ!」とがんばる必要は、あまりないとのこと。また、大切なのは、気にかけること。「森や公園に行って気をもらおう!!なんて、さびしいことを思わないで、『好きな木や草花に会いに行こう』というような、やさしい眼差しでいること」と藤田さん。この日は、半分ほど腐っている大きなヤマモモの木をみんなで囲んで、元気づける“気”の交流をしました。そして、自分が好きな木と向き合い、木の内側に樹液が流れる様子を思い浮かべて静かな時間を味わうことも。人それぞれが、それぞれの木のことを想っているときの気持ちよさそうな姿が印象的でした。
最後は、室内に戻って、今日を振り返りながらのお茶会です。教室を拝見するだけでも、鳥や虫の鳴き声に耳を傾けたり、心地よい風を全身で受けたり、何百年も前から生きている木に感動したりと、一つひとつを丁寧に感じることによって、日常のなかで、いかに「私が!私が!」となっていて、周りを見ることができていないかに気づきます。なので、みなさんも、街や公園などで、木を見かけたら「この木は何の木だろう」「元気にしているかな」など思いを馳せてみてはいかがでしょうか?自分のなかに“豊かな森”が広がって、やさしい気持ちになりますよ。
①足を肩幅に開き、まっすぐ立ちます。足先は少し内向き気味。
②息を吸いながら、根っこから幹に沿うように、枝先に向かって両腕を上げていきます。
③枝先まで気が行き渡るようなイメージで、両腕を大きく左右に開きます。
④息を吐きながら、手のひらを下に向けて左右に広げながら下げていきます。
※②~④を数回繰り返します。
①足を肩幅に開き、足先を少し内向き気味に、膝を少し曲げて立ちます。
②息を吸いながら、腕を振り子のように前に振り出します。
③息を軽めに吐きながら、両腕を後ろに振ります。後ろに必要のないものを捨てていくイメージで。
④②と③を数回繰り返した後、左右に両腕を振る“でんでん太鼓”バージョンも数回繰り返す。
『心の変化が大きいですね。家族をはじめ、まわりにいる人たちに対して、
やさしくなっているみたい。樹林気功を休んでいると、やさしくないのか、家族に「気功しに行っておいで~」と言われてしまうこともあるんですよ』
『感謝することが増えました。太陽にも、夕陽にも、月にも、虫にも、ありがとう。
心から、そう思えるんです』
『公園に行っても、自分ひとりでは気づけないことがいっぱい。先生から教えてもらって、「ああ、そうだなあ」と、すとんと入ってくるようになりました』
「これから、どう生きていこうか」と模索しているとき、樹林気功の提唱者である今田求仁生氏に出会い、師事する。自身も、樹林気功によって健やかになれたと話す。現在は、三重県津市美杉町に在住し、樹林気功を日課としながら、伝え手として教室を三重県内で開講。12名からの出張講座はどこでも可。著書に、イラスト入りでわかりやすく解説した『森へのいざない やさしい樹林気功』(全国林業改良普及協会)がある。
樹林気功公式サイト
» http://www.jyurinkikou.net