田舎に住む人と都会に住む人を繋ぐ旅行会社「つばさプロジェクト」。実際に田舎体験ツアーがおこなわれる奈良県の農村にお邪魔して、代表の越道さんにお話を伺いました。
駅に降り立った瞬間、目の前に広がるのは、濃い緑の山々と澄んだ川の流れる豊かな自然。駅で迎えてくれた越道さんの車に乗り込み向かった先は、宇陀市室生区西谷地区。周囲を山に囲まれた35戸ほどの農村です。谷の斜面に点々と瓦屋根の日本家屋が建ち、反対側の斜面には棚田。田植え後の田んぼにはおたまじゃくしが泳ぎ、山からはさかんに鳥のさえずりが聞こえる。
つばさプロジェクトのツアーでは、そんな豊かな自然に恵まれた、いずれも大阪市内から電車で1時間ほどの田舎が舞台です。“旅先で出会った人と仲良くなれる”のが、田舎体験ツアー。旅の目的地となる田舎に住まう人たちに教わりながら、田植えをしたり、魚を釣ったり。「田舎っていうのは、村社会なんていう悪い言い方もありますけど、よく言えば人間関係が豊か。最近“結”なんて言葉で紹介されますが、田んぼの作業なんかも今日は誰々さんのところ、という風にみんなで助け合うんです」。
自然の中での遊びや懐かしい手づくり体験だけではなく、都市に暮らしていると忘れてしまいがちな、そんな人との“なんかあったかい”繋がりを体験できるのがつばさプロジェクトの魅力です。
ツアーに参加すると、土地の人たちとのふれあいが待っています。「できるだけ村のおじいちゃん、おばあちゃんに案内してもらうように心がけている」という田舎体験には、おそとの魅力がたっぷり詰まっています。村の人に教わりながら春は山菜やタケノコ採り、田植え体験、夏はホタル観察にはじまり、アユ釣り、川遊びにカブトムシ捕り。秋は稲刈りや木の実採り、冬は雪のかまくらづくりなど、季節ごとに違うおそと遊びが盛りだくさん。
これからの季節は川遊びがおすすめ。子どもでも安心して遊べるぐらいの深さの川で、潜ったり魚を捕ったり、イカダに乗ったり。「子どもたちはまず、川に生き物がいるってことに驚きますね。大阪の川ではまず潜れないし、あんまり生き物を見ることもないですし。ここでは水がきれいなので川に潜っても遠くまで見えるんです」。
めいいっぱい遊んだ後に待っているのは、村の人たちが準備してくれる、鹿肉のバーベキューや流しそうめん。もちろん川で冷やしたスイカのおいしさは、言うまでもありません。
あまりアウトドアの経験がない家族の参加が多いのも特徴。おそと遊びの達人でもある村の人が先生になって、一緒に魚釣りや虫捕りができるのではじめてでもへっちゃらなのです。
とは言え、今ではツアーを支えてくれている田舎の人たちも最初は「なんでこんな何もない村でツアーするの?」と不思議に思ったり、「都会の人がたくさん来て汚して帰るだけだろう」と反対したり。
そんな思いを払拭したのは、ツアーに参加した子どもたちでした。トンボやチョウを追いかけたり、村の人に作ってもらったおにぎりを喜んでほうばっている子どもたちを見て「何にもないと思ってたけど、こんなに子どもたちに喜んでもらえるんや」とみんな納得。今では、もうすぐこんな花が見頃だよ、とかこんな野菜を作ったから収穫においで、とか村の方から積極的に提案してくれているのだそう。
道越さんは「川遊びやムシ捕りなどの田舎体験はきっかけ」と言います。「ツアーに参加して、村の人と話をして仲良くなってもらえる。田舎に来て、親戚の家に遊びに来たみたいだって言われるとうれしいですね」とも。訪れる都会の人と迎える田舎の人が、自然のなかで過ごすことをきっかけにして仲良くなれる。そんな田舎体験してみませんか?