自然が主役のピクニック

自然が主役のピクニック

兵庫県丹波市で行われる屋外イベント“歌とピクニック”。2回目の開催に向けて準備も大詰めというある日、主催者である近藤清人さんに、近藤さん流のピクニックについて伺いました。


「何もない」豊かさ

“歌とピクニック”の開催地であり、ご自身の地元でもある丹波市の良さを「何もない」ところ、と言い切る近藤さん。実はそれは、かつての近藤さんが丹波を嫌った理由でもありました。「刺激もない、娯楽施設も少ない」と、高校を卒業すると丹波を離れた近藤さん。やがて大人になり、子どもが生まれ、丹波の良さに気付くようになります。お話を伺いはじめてすぐに「これが丹波です」と見せていただいた写真には、人々が歩くのどかな通りの様子や秋の赤や黄色に染まった木々、雪化粧をした山などの美しい景色が広がっていました。そこに映っていたのは「何もない」ことの豊かさ。それに気付いた近藤さんは、自分なりの方法で丹波を知ってもらおうと考えます。
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不思議とほっとする、長閑な丹波の風景

四季の変化そのものが美しい丹波。それは、かけがえのない魅力でもあります

それまで地域の観光資源とされていたのは、寺社などの歴史的建造物や大納言小豆や栗などの農産物。そのせいか、丹波市を訪れる観光客の平均年齢は39歳、男性が過半数を占めていました。近藤さんはターゲットを20~30代の女性に定め、彼女たちが丹波を訪れる口実となるようなイベントを企画します。訪れた女性たちが「こんなところに私も住んでみたい」と言ってもらえることが、地元に住む人の自信にもつながると考えたのです。

若い女性が丹波を訪れるきっかけになるように、おしゃれなショップの出店や素敵な音楽コンサートがおこなわれた、昨年の歌とピクニック

一日まるごとピクニック

「来てもらえれば丹波の良さを体感してもらえる」との確信を胸に、はじめて「歌とピクニック」を開催したのが2011年の秋。元々ピクニックが好きだったという近藤さんですが、このイベントタイトルに込められた思いをこう語ってくれました。「ピクニックというのは、自然を楽しむために外へ出かけることなんだと思います。屋外のイベントでは、往々にしてその土地がイベントの背景になってしまったり、自然とのギャップを楽しむというようなことがあります。ただ、僕は自然を主役にしたかったんです」と。

全てのプログラムが自然と一体となり、自然と溶け合うことの喜びを感じることができる

昨年の“歌とピクニック”を訪れた人は合計2,000人。遠くは東京や埼玉から訪れた人もいました。5,6年も利用されていなかったという自然公園の、生い茂った草を刈って開かれたという会場は、山々に囲まれた、まさに丹波の自然の豊かさを体感できる場所。そこで、アート作品を見たり、音楽に身を委ねたり、美味しい食事に満たされたり。「参加された方には、自分なりの楽しみを見つけて欲しいと思っています。立っていたらわからないことも、座ってみて気づくことがありますよね」という近藤さんの想いを知ってか知らずか、初めての開催にも関わらず、自らハンモックやチェアを持参し、自由に過ごす人の姿も見られたとか。

広がるピクニックの楽しみ

今年の“歌とピクニック”は、10/13(土)、14(日)に開催されました。とっておきは、一日目のイベント終了後に会場横のキャンプ場でおこなわれたキャンプファイヤーと星空観賞会。キャンプファイヤーにつきものの、フォークダンスもおこなわれました!日中の眩しい太陽の下で丹波の自然を満喫したあと、仲間もその日はじめて会った人も一緒になって囲む真っ赤な炎、そして空に輝く満点の星。近藤さん流の“自然を主役に楽しむ”ピクニックをフルコースで楽しめる、素敵な企画ですよね。

「丹波だけではなく、『何もない』と思われている地域は日本全国にたくさんあります。それぞれの場所で、その『何もない』を愉しむ仕掛けがつくれたらいいと思います」と近藤さん。「何もない」と感じられるからこそ、その場所を主役に楽しむピクニックをしてみる価値がありそうです。木々を吹き渡る風に気付くこと、遠くで鳴く鳥の声に耳を澄ますこと、そして真っ赤な太陽が沈むときを横に座る人と共に過ごすことができること、その瞬間に「何もない」は「何かある」に変わるのかもしれません。

2012/10/13(土)、14(日)
@うぐいすの森(丹波うぐいすの森公園)
兵庫県丹波市市島町与戸字長尾


近藤清人さん

SASI DESIGN代表。兵庫県丹波市の田園広がる里山で育つ。
インテリアデザインを現場で学び、数多くの住宅や店舗、家具のデザイン設計に携わる。
2011年「歌とピクニック in tamba」を立ち上げ、2012年には、手紙による豊かなコミュニケーションを創出するソーシャルデザイン「P.S project」を展開する。インテリアデザインやプロダクトデザイン、グラフィックデザイン等を手段として総合的に駆使し、人々の行動によい影響を及ぼす為の『本当の意味でのデザイン』をおこなっている。


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