小さな鉢から広がる大きな贅沢

小さな鉢から広がる大きな贅沢

手軽に野菜などを育てることができて楽しいベランダ菜園ですが、ベランダで育てることができるのは、野菜だけじゃないんです。今回は、ベランダでできる果樹のとっておきの楽しみを紹介します。


手間いらずのベランダ果樹栽培

ベランダでできた採れたての野菜は、毎日の食卓を豊かに彩ります。そこに色鮮やかなフルーツが加われば、更に完璧!そんな食卓のグレードアップにもってこいの果樹を、ベランダで育てることはできないものかしら?という疑問に答えてくれたのは、人気ブログ「大好き☆ベランダ菜園」を主催されている宮田範子さん。「実は果樹を育てるのは、野菜を育てるよりもお世話が簡単です。おすすめは、ブルーベリーやブラックベリーなどのベリー類。そのまま食べても甘酸っぱくておいしいし、ジャムにしたり、ソースにしたり、楽しみ方も多彩です」とは、心強いお言葉。これまで宮田さんが育てた果樹は、ベリー類以外にも巨峰やレモン、ゆず、姫リンゴなど。現在はお仕事場の屋上に移動させたものもありますが、いずれも立派な果実を実らせています。

ブラックベリーやいちご、ブルーベリーだけでなく、レモンや姫リンゴまで、見事に実をつけています

果樹は野菜のように、収穫後に残った葉や茎を土から掘り起こして処分する手間もなく、病気や虫もつきにくいと言います。果樹の種類にもよりますが、ベリー類であれば苗を植えてから2、3年後には収穫が楽しめるようになるそう。例えば、「赤ちゃんが産まれたときの記念に苗を植えてみてはどうでしょう?水やりさえ欠かさずにすれば、子育てが少し落ち着くころにちょうど実がつきますよ」と宮田さん。子どもの成長と共に美味しく楽しむことができる記念樹、とても素敵なアイデアです。

工夫を凝らして変化を楽しむ

宮田さんのお宅のベランダは、特別広いわけではありませんが、限られたスペースを有効に生かす長年の工夫がぎゅっと詰まっています。例えば、果樹や野菜が育つ鉢が載せられた台。それによって屋根と壁に囲われたベランダでも最大限に日当たりを確保することができるのです。更に、ブドウやブルーベリー、ブラックベリーなど蔓を巻くものは、行灯支柱(あんどんしちゅう)にします。朝顔を育てるときに良く使われる支柱ですが、果樹の枝が横に広がらず縦の空間を有効活用できる、とっておきの方法です。お手入れは、定期的に水をあげることと花が咲いた後に肥料(液肥で十分!)をあげること、古い枝を剪定することなど。宮田さんは、年に1度は植え替えをしているそうですが、それだけで毎年収穫ができると聞けば、「私も挑戦してみよう!」という気になりますよね。

壁沿いに置いた台の上に鉢を置くのが、日当たりを確保する秘訣です

巨峰やブルーベリー、ブラックベリーは行灯支柱に絡ませて、縦の空間を有効活用

宮田さんは、果樹の楽しみは収穫だけではないとも教えてくれました。「ブルーベリーは実だけではなく花もかわいらしくて、真っ赤に染まる紅葉もきれいなんです。ブラックベリーの実が徐々に色づく様子も不思議です。毎年収穫量が増えていくのも、果樹ならではの楽しみですよね」。種類によっては隔年結果といって、1年ごとに豊作と不作を繰り返すものもありますが、そんな年ごとの違いも含め、長い期間での変化を楽しめるのも果樹の魅力のようです。

ブルーベリーは食べる以外の楽しみもあります。左から、小さなかわいい花、徐々に色づいていくのが楽しみな実、真っ赤な葉が青空に映える紅葉の様子

小さな自然がもたらすもの

宮田さんはふたりの男の子のお母さん。「子どもが成長し、習い事などをはじめると、公園で一緒に遊ぶということが少なくなりました。本当は自然のたっぷりある所にも行きたいのですが、なかなか行けない。だからこそ、小さな自然がベランダにあると贅沢だと思います」。お子さんたちも毎年収穫を楽しみにしていて、そこから会話も広がっているのだそう。自宅のベランダで味覚狩りができるなんて、とっても羨ましいですよね。

収穫したフルーツを使ったお菓子づくりも楽しみのひとつ。写真はヨーグルトレアチーズケーキのベリーソース

収穫中にちょっとつまみ食い。家族との会話も弾む、楽しいひとときです

春から早速育ててみたいという方は、一番簡単なブルーベリーからはじめてみてはいかが?温暖な大阪で育てるのにおすすめなのは“ラビットアイ系”という系統。注意が必要なのは、同じラビットアイ系の違う品種の苗を2本以上植えるようにしなければいけないということ。“ブルーベリー(特にラビットアイ系)は、同じ系統の違う品種が2本以上ないと実をつけない”という性質(自家和合性)があるのです。花が咲いたときに、小さな筆でちょっと受粉のお手伝いをしてあげるのも実のつきが良くなるコツのひとつ。

ベランダの鉢は小さいものですが、美味しい実りや大きな喜びを生み出します。毎日の変化から年を経るごとに育つ楽しみまで、家族で共有できるベランダ果樹栽培には、身近なおそとで味わう、贅沢な美味しさがぎゅっと詰まっているのです。


宮田 範子

主婦であり、二児の母。大阪市内在住。ベランダ菜園の大人気ブログ「大好き☆ベランダ菜園」
主催。2011年秋に発売された著書『ベランダ菜園セラピー』(株式会社保育社)では、ベランダ菜園の魅力や効果、果樹や野菜の育て方などがわかりやすく紹介されています。

» http://ameblo.jp/daisuki-ayumi/


  • 都市を豊かにするミツバチ

大阪のど真ん中、梅田のとあるビルの屋上で、小さなミツバチたちの羽音が聞こえはじめました。“ブ~ン”というその音は、まるで春を知らせる号砲のよう。彼らにとって忙しい季節のはじまりです。

  • 続きを読む
  • 大地の恵みを感じるおそと

草木や土の香りがする美しい風景のなかでの農作業は、都市に住む人には非日常的な感覚をもたらします。棚田の原風景を守ろうと地元の人たちが創設した“明日香の未来を創る会”では、週末、大阪や京都などから会員家族が集い、農作業をおこなっています。彼らの活動を通して、大地の恵みに触れ合う魅力をお伝えします。

  • 続きを読む

  • OSOTOトップへ
  • 全ての記事一覧