ルーブル美術館の西側に位置するこの公園は、ベルサイユ宮殿の庭園を手がけたル・ノートルによって、チュイルリー宮殿跡地に17世紀つくられたフランス式庭園である。パリの中心部にあり、観光名所でもあるため、たくさんの人々が訪れる。歴史あるこの公園でも、現代の人々が、自分のお気に入りの場所を楽しんでいる風景が見られた。
公園は、東西方向の園路を軸に左右対称につくられている。見通しが確保され、その広大さに圧倒される。西側の園路の先にはコンコルド広場の記念碑が見え、その遠く奥には凱旋門が見えるという立地も素晴らしい。園内には移動可能なチェアが置かれており、好きな場所に運んで座ることが出来る。人々は噴水前、木陰、彫刻の傍、花壇の横といった場所で、読書や昼寝、友人との会話などを楽しんでいる。珍しい活動をしているわけではなく、普通に見られる風景のはずだが、思わずカメラを構えたくなってしまった。
パリの南西に位置し、フランスの有名な自動車会社シトロエンの工場跡地を公園にしたものである。広大な芝生広場を囲むように高い生垣が設けられ、生垣の奥にハーブガーデンや花壇などそれぞれテーマを持ち、色の名前が付けられた6つの小さな空間が存在する。大小8つの温室があるのも特徴的で、人々は思い思いに自分の時間を過ごしている。公園中央では、パリ市内を眺めることができる気球が毎日上げられ、公園のシンボルになっている。
その他にも噴水や、カスケード、水路、展望台などがあり、楽しみ方は無限大である。芝生広場は明確な仕切りがないにもかかわらず、走り回って遊ぶゾーンと昼寝やおしゃべりなどゆったりと過ごすゾーンとに自然に使い分けられている。人の使いこなしによって空間が作られているように感じ、非常に興味深いものがあった。
特に派手ではないが、結婚パーティをしている集まりもある。花苗や種をプレゼントしている人達もいて、子どもたちが嬉しそうに手を差し出していたのが印象的であった。日常の中で楽しみながら植物に触れるこのような経験が、緑の大切さを感じるきっかけになるのだろう。
遊びの場所、ハレの日の舞台、日々の休息と、生活の場のひとつとして公園という場所が大切にされているように感じる公園だった。
パリ市内にはたくさんの小規模な公園が、日本と同様にたくさん存在している。チュイルリーパークやシトロエンパークもそうだが、これらの小さな公園も外周部が柵で囲われ、使用時間が決まっていた。そのおかげなのか、たくさんの人々に利用されているにもかかわらず、綺麗に維持されていることに驚いた。
さらに驚いたのは、日本の街区公園にはあまり見られることがない、様々な年代の人々が積極的に利用していることである。ホテルの前の公園は、パリ市かホテルか、誰が管理をしているのかはわからなかったが綺麗に管理され、夕方にはキャンドルの灯りがともり、大人たちが集う場所となっていた。
子どもだけではなく大人も集う公園は、一日中活気に満ちていた。公園から滲み出した活気は街にも活力を与え、街をより魅力的にしている。
そしてパリの街に夜のとばりが下りる頃、人々はライトアップされたエッフェル塔の前の広場に集い、毎晩のようにワイン片手にナイトピクニックを楽しんでいた。その光景は、パリの人々が厳しい冬の前に、おそとをおもいっきり楽しんでいるかのように見えた。
パリの人々は、屋外で過ごす事が、日常生活の一部となっている。公園や、広場などの屋外空間が、リビングやホール、カフェであり、友達と集まる場所なのである。統一された町並みや豊かな緑が心地よいだけではなく、美しい街の風景の中に人々の生活が見ることできる。それが、世界中のひとびとが憧れるパリの特徴であり、魅力なのである。