ロッキー山脈を背にしたコロラド州デンバー市

アメリカ大リーグのロッキーズ、フットボールのブロンコスの本拠地であり、またマイル・ハイ・シティ(海抜1マイル=約1,600m)としても知られるコロラド州デンバー市。ロッキー山脈東の麓に位置するアメリカ中西部の大都市であり、その昔1840年代、開拓者が金とバッファローを求め、そこに街を創り始めたのがデンバー。そのデンバーの中心で、いつも大勢の陽気な人々で賑わっているのが、16thストリートモール。全長約1.8km、真っすぐに続く歩行者専用モールはビジネス街の中心にあり、街の文化、経済、そしてエネルギーの源。街はここから生まれ、デンバーの人たちのドラマが今日も演じられる街のステージである。

私が初めてデンバーを訪れたとき、ダウンタウンが実に美しく、いきいきと活気のある16thストリートモールの光景に感動した。まず、私の目に入ってきたのは、道でありながら車は1台もなく、そこには子供からお年寄りまで、そして様々な人種の人々があふれている街の姿だった。木陰でランチブレイクをとるビジネスマン、ウインドウショッピングする人、ベンチでただただくつろぐ人、皆が思い思いにこの場所を楽しんでいるものだなと思った。日中も夕暮れ時も、モール沿いにあるレストランやオープンカフェは、食事とおしゃべりを楽しむ人々で夜遅くまで賑わっている。街の賑やかな姿を楽しむには、このオープンカフェに座りながら街の様子を眺めるのが一番。

次に驚いたのは、その車のない道をシャトルバスが走り、長いモールを移動する人たちの立派な足代わりとなっていること。また、それがすべて無料サービスなのだ!乗り降りがしやすいようステップは低く造られ、窓は大きく、中からは外の様子が良くわかる。実に歩行者のことが考えられたやさしい街だなと、それだけで心がうきうきした。このシャトルバスは環境に優しいハイブリッドエンジンを使用し、東行きと西行きに別れ、約2分間隔で運行される。近郊を結ぶライトレールや高速バスとも連絡し、車を使わずにダウンタウンと郊外を結んでいる。近い将来には、街中がこのライトレールで結ばれる計画なのだそうだ。

ショッピング、レストラン、エンターテイメントでいつも賑わう16thストリートモール

シャトルバスに乗れば、楽に移動ができる

モールの片側は、アメリカ全土へつながる玄関口、デンバー・ユニオン駅

もう一方は、州会議事堂へとつながる

16thストリートモールがつくられたのは、決して偶然ではなく、この街にあるお店のオーナーであったダナ・クロフォードさんが変わりゆく街の姿を見て、何とかしなくてはと感じたのが始まりだった。1960年代に路面電車の道は自動車が行きかう道に変わり、ダウンタウンの古い建物は次々と壊され、多くの店がダウンタウンから郊外へと移っていった。この様子に、何とかもう一度ダウンタウンに活気を取り戻そうと立ち上がったのだ。その行動の一番目として、消えようとしていたラリマー・ストリートの美しい歴史的な街並みの保護を行い、それが今のラリマー・スクエアとなり、デンバーの昔の街並みを新しい街として復活させた。その次に行われたのが16thストリートモール。この街の中心に活力を与える動きは、その後、街全体のマスタープランの基礎となり、次々と進む街の開発は、常にこの16thストリートモールとのつながりを大切に計画されている。

マスタープランの骨格は実にシンプルで、まずは16thストリートモールが街の中心軸となり、その両端には政治の中心である州会議事堂と流通の要所であるデンバー・ユニオン駅がある。そして、中心軸から手足のように伸びる道は、近隣にある文化、教育、医療、住宅、スポーツ施設をダウンタウンとつないでいる。また、このマスタープランでは街と水、すなわちダウンタウンと川沿いの空間を結ぶことも大切であると考えられており、近年は、水辺を中心に新しい住宅やオフィスビルなどの建設が次々と進められている。ダウンタウンに住み、ダウンタウンで仕事や遊びができる。今、一番人気のある健康でクールなライフスタイルだ。

保護された美しい歴史的建築物が立ち並び、いつも賑やかなラリマー・スクエア

クマのパブリックアートで親しまれるコロラドコンベンションセンター

アメリカ中西部最大のビジネス街もモールと隣り合わせ

オペラやモダンプレイが演じられるデンバー・パフォーミング・アート・コンプレックス

私の友人の一人であるジムさん一家は、ダウンタウンまで歩いて3分のチェリークリーク川のほとりにあるコンドミニアムに暮らしている。毎日、彼はダウンタウンにある会社へ歩いて通勤。週末は子供たちと近くの公園やエリッチガーデン遊園地で遊んだり、ロッキーズの試合を観戦しに歩いてスタジアムまで行くそうだ。郊外に住んでいた以前と比べると、車に乗る必要があまり無くなり、家族と過ごす時間がずっと増えたとか。

アメリカ開拓時代の姿がいまだに感じられ、しかも未来へと常に歩み続けているデンバー。人に優しい街づくりの考え方は、市民の暮らしを支え、そしてデンバーを訪れる人たちも温かく迎えてくれる。そんなデンバーらしい青空いっぱいの下、16thストリートモールは、デンバーの中心としてこれからもあり続けることだろう。アメリカへの旅行を計画する際には、是非、デンバーの16thストリートモールに立ち寄ることをお薦めする。

郊外とダウンタウンとを結ぶ高速バスのターミナル

無料のシャトルバスがあるから、モール中どこへ行くのもらくらく!

ライトレールはこれからの交通手段の主役!便利で早く、そしてとても楽しい乗り物

ダウンタウンに近いからとても便利、健康な暮らしができるニュータウン