10年ぐらい前から、極東の島国を離れて、南国の島国であるバリ島へ旅することが多くなった。

バリ島は、大阪府の約3倍程度の広さがあるインドネシアの常夏の島で、日本からは7時間程度で飛ぶことができる。時差が1時間というのもありがたい。雨季は大体10月~3月。でも日本の梅雨のように連日の憂鬱な天候ではなく、1日多くても2~3時間スコールが降って、そのあとは青空や美しい夕焼けが広がる。“おそと”で過ごすことがたまらなく好きな人には、本当にうってつけの楽園だ。またバリ島には、有史以来培われた豊かな文化がある。多く残る古い建築様式の建物や、「どこまで~!?」というほど目に付く装飾の数々に、その奥深さを読み取ることができる。

装飾豊かな古い建築様式の建物

装飾豊かな古い建築様式の建物

島国であるため、つい海辺のリゾートを連想しがちだが、私のオススメは、空港から車で60分、「ウブド(Ubud)」という棚田と森に囲まれた芸術村だ。この村は、バリ島の豊かな文化をベースに、世界中からの観光客や移民の知恵や工夫によって花開いた、ミックスカルチャー具合がとにかく心地良い。

まずカフェやレストランは、オープンエアーが基本。シンプルに、大きな屋根だけのコテージが生み出す日陰と、棚田や森から吹きぬける風だけで、それほど暑さを感じることはない。まるで空調設備が作り出せない心地よさを競っているかのように、それぞれの場所の特徴を活かして作られている。メニューは、庶民料理から和・洋・中・オーガニックなど、誰もが好みや懐具合に合わせて自由に食事を楽しむことができる。それは豊かな自然に支えられた、有り余るほどの食材のおかげ。ちなみに稲作はなんと三期作可能だ。

海外のカフェやレストランの様式を
バリ風に取り入れたファサード

害虫駆除のアイガモの数が日本よりとても多い

次に宿は、有名高級ホテルから千円前後で泊まれる安宿まで、実に多様なラインナップ。ユニークなのは、高ければ必ず心地良く、安ければやっぱり不快と一概にはくくれないところだ。数千円程度の宿でも、コテージタイプで、テラスで朝食をとったり、屋外型のお風呂だったり、プールでのんびり過ごすことなどが十分可能なのは嬉しい。さらに少し専門的な見方をすると、宿の建て方が心憎いのだ。森に囲まれたウブドには、南北に通過する幾本もの川が作った谷がたくさんある。その谷地形に寄り添うカタチで建てられているものが多いのだ。大きな谷の上から、谷に広がるライステラスのパノラマを望むことができる宿や、小さな谷底の川の近くに建てられ、小川のせせらぎを感じることができるものもある。実に建築そのものが、“おそと”を使いこなしているわけだ!

谷底に流れる川を望む

谷底に流れる川を望む

大きな谷の上から、谷全体を望む

大きな谷の上から、谷全体を望む

最後に、人は、バリヒンズー教による身分制度は残るものの、知らない人同士でもすぐにおしゃべりしだす。おおらかに世界の文化を受け入れているが、とても信仰心は高い。車のダッシュボードにさえ、お供えの花かごを飾るほどだ。また夜になるとウブドでは、観光目的と村に住む人々のバリ人としてのプライドを育むため、住民による民族舞踊やショーが、屋外集会場で開催されている。 “夜のおそと”で聴くガムランや木琴(竹製)は、観客を悠久の時の流れにいざなってくれる。

住民による民族舞踊を楽しむ観光客

住民による民族舞踊を楽しむ観光客

近年ウブドでもゴミ問題や、自動車の増加はやはり気になるところだが、地球やカラダのことを考えたショップやカフェも増えてきた。異なる文化や習慣を受け入れつつ、“おそと”の魅力を最大限に活かした営みが、これからも続くことを願ってやまない。