ドイツのフランクフルトで2年に一度行われる「Light + Building」は世界最大の照明の展示会。
2012年春も世界中から約196,000人が訪れた。夜には「Luminale(ルミナーレ)」としてフランクフルトの市内約160ヶ所で様々な光のアートインスタレーション(※1)が行われ、たくさんの人たちが大人のおそと時間を楽しんでいた。今回は、そこで見つけた素敵な「夜のおそと」の楽しさを紹介していく。

Kulturcampus 「Time Drifts」

ゲーテ大学の広場では、広場全体を映像で埋め尽くすダイナミックな空間が広がっていた。学生やインスタレーションを見に来た様々な人が、映し出されたテキストや映像のシャワーに歓声を上げていた。壁や地面、散布されているミストに映る光の表情も楽しいが、自分自身も映像に包まれるおそと体験ができる。

手前に見えるのはミストを使った演出。映像は光でもあるので、ミストの変化が光の強弱となり、息をのむような空間が生まれている(写真1)

様々な文字がランダムに映り込む。人も自転車もスクリーンとなり、映像(光)と一体化する(写真2)

Palmengarten 「Lunas Park」

植物園パルメンガルテンでは、園内に様々な作品が仕掛けられており、めぐる楽しさで時間を忘れてしまう。植物園内にある大温室には、南国の植物と共に花や葉のオブジェが置かれ、LEDのカラーライティングで照らされ幻想的で圧巻。(写真3-1、3-2)
その他にも、動く花のオブジェや光ファイバーで造られた光の樹木「Archilace」(写真4)、美しい植物の巨大な映像の前では、足元に3D映像が広がっているなど(写真5)、最新のライティング技術で創造されたアート作品が並んでいた。

大温室では巨大な白色の花や葉のオブジェが吊るされ、室内の植物と渾然一体となったインスタレーションが行われていた。白い人造の植物たちはスクリーンとなり、様々な色彩に変化。巨大な植物たちが語りかけてくる夢の世界のような空間であった(写真3-1、3-2)

光ファイバーで造られた樹木は、水や樹液のような光で満たされ、まさに生き物のような印象。幹や枝をリアルに再現しているわけではないのに、光が樹木の生命力を感じさせる(写真4)

マクロとミクロの対比が印象的な作品だが、マクロに映し出された植物の世界からは、あらためて神々しさが感じられた(写真5)

また、園路内の一角に作られた「エンジェルトランペット」と呼ばれる巨大なキノコのようなオブジェは、柳と革とウールからできたもので、わずかなLEDのライティングが音と共に動き、不思議な環境を創り出していた。みんな写真を撮ろうとカメラを構えていたが、あまりの暗さにギブアップしている様子が面白かった。(写真6)
他にも「Broken Heart(写真7)」や睡蓮などのオブジェ(写真8)、「天使の環」を身に着けた人が歩いていたりと(写真9)、ついつい微笑んだり歓声をあげたりできる仕掛けがてんこ盛りであった。

「エンジェルトランペット」という巨大キノコのような作品。音と光が少しずつ様々に変化する不思議なエリアが出来ていた。光の強弱のリズムがゆっくりだと、何故だかいつも「生命」を感じるのは不思議(写真6)

ネオン管のような棒状の発光物がランダムに構成されたオブジェ。ある角度から見ると針葉樹の森の中に真っ赤な光のハートが出現(写真7)

ガーデンにある池には、折り紙のような睡蓮のオブジェが浮かぶ。小さなLEDが光源となっている(写真8)

ガーデンに出没する「天使の環を着けた人」。さりげなく歩いているので、皆突然気づいて振り返り微笑んでいる(写真9)

演出の光がなくても、わずかな漏れ光で姿が見えている園内の花や緑が心地よい(写真10)

ライトアップされたドイツの森。力強い幹のシルエットが印象的(写真11)

メイン会場である植物園内の噴水は、姉妹都市リヨンからライティングデザイナーのジャック・フルニエ氏を迎え、姉妹都市の50周年を記念していた(写真12)。フランスのリヨンは世界で最も有名な「光の祭典」を毎年行っている町で、このフランクフルトのLuminaleも、そういった町と町のつながりから生まれたそうだ。
フランクフルトの光の祭典「Luminale」も2012年で10周年。今では公共の巡回バスも深夜まで走っている。期間中には光をまとった一般市民によるローラースケートのパレードや、参加型のインスタレーション、ビルのライトアップや公共彫刻を使ったオブジェなどがあり、公共・民間が一緒になって創る「灯り」のイベントとなっている。

フルニエ氏演出の噴水。場所の持つ魅力を引き出して行われる光の祭典という意味でも、ここフランクフルトも頑張っている(写真12)

毎回異なった演出が行われる中央駅。今回は道行く人が影絵のネタになるという参加型の作品で賑わっていた(写真13)

イベントのためなのか、日常的な演出なのか不明だが、市中のビルもライトアップ(写真14)

作品マップにもバスのルートが明記されている。どこで乗っても無料の「ルミナーレバス」が24時まで運行するのでとても便利(写真15)

次の開催は2014年4月。誰もが自由に町中で体験できる「光の祭典・夜のおそとイベント」だから、ぜひ一度、自分の目で見て体感してほしい。期間中は深夜までレストランも開いており、光のアートをめぐりながら町中を散策し、巡り疲れたらレストランで地ビールとソーセージで乾杯。と、最高の夜が味わえる。

※1インスタレーション:現代アートの表現手法の1つで、場所や空間全体を作品として体験させる芸術