グアテマラで出会ったスタジアム型広場”

「ワァーワァーワァー」「ガヤガヤ」好奇心旺盛な地元の人たちが大勢見守る中で、オープニングイベント「対決!!バケツリレー」が始まった。ここは、中米グアテマラ国の火山のふもとの町「サンフアン・アルテナンゴ」の中央広場である。

今年の7月5日から22日まで、JICAの短期専門家として、中米の2ヵ国グアテマラとエルサルバドルに派遣された。今回の派遣のミッションは、2005年に阪神淡路大震災10周年事業として神戸で開発された、楽しく学ぶ防災訓練「イザ!カエルキャラバン!」のシステム及びノウハウの現地への伝達である。両国で、デモンストレーション的に「イザ!カエルキャラバン!」を4回に渡って開催した。
この開催にあたっては、地元のボランティア向けに事前講習会を開催し、当日はそのボランティアたちが現場を運営するという手法をとった。地域防災の主役はあくまでも地元の人たちであり、その人たちに、防災活動を活発に展開していくための一つの手法を伝えることが、私たちに与えられた任務であった。

グアテマラで出会ったスタジアム型広場

話を「サンファン・アルテナンゴ」の中方広場に戻そう。私たちは7月9日の朝9時に広場に到着した。最初に見た光景は、ボロボロになったサッカーボールを追いかける地元の子どもたちの姿だった。広場を縦横無尽に走り回る子どもたち。しばらくすると近くの小学校の児童たちがゼッケンをつけて登場。どうやら小学校の体育の授業が始まったようである。短い体育の時間が終わるのを待って、私たちの防災プログラムの準備が始まった。

この広場は非常にユニークな形状をしている。まわりの土地から少しくぼんだ所に広場があり、周囲がスタジアムの客席のような状態になっている。仕切りの低い壁もちょうど椅子の高さぐらいになっており、見学者は皆そこに腰をかけている。また、さらに上がった最上段には、水場のある洗濯スペースがあり、地元のたくさんの女性たちが一生懸命洗濯をしている。こうした、いわば小さなスタジアムで「イザ!カエルキャラバン!」はスタートした。

グアテマラで出会ったスタジアム型広場

オープニングの「バケツリレー」が始まると、スタジアムはたくさんの観客に囲まれ、日本では経験したことのない大歓声の中での防災訓練となった。バケツリレー終了後もゲーム風にアレンジされた「消火訓練」「毛布担架での搬送訓練」「ジャッキを使っての救出訓練」などが各ブースに分かれて行われ、どこも大変盛況であった。プログラムの最後には、私がインストラクター役を務める「神戸防災体操」が児童全員参加の形で行われ、全プログラムが終了した。
プログラム終了すると、さっきまでどこかに行っていた地元の子どもたちが広場に集まり、また草サッカーが始まった。

グアテマラで出会ったスタジアム型広場

子どもの遊び場、小学校の体育の授業、地域のお祭り…。この広場は地域のみんなのために存在しており、本当にいろいろな用途に使い倒されている。そして、その広場を見下ろすように、お母さんたちの洗濯場がある。生活に密着した広場の典型を見た気がした。こんな広場が日本にどのくらいあるだろうか。この広場があるだけで、ここの地域の人たちは繋がって共に生きているはずだ。そして、そんな地域のつながりが、防災には何にも増して重要なのである。防災を教えに来たはずの私が、逆にここグアテマラで、防災にとって何が重要かを再認識させられた気がした。