気がつくとシドニー生活も15年。他に住んだことのある豪州の数々の町や都市と比べると、シドニーの魅力は、良い意味でのお役所パワーだとわかってきました。シドニーは、残念ながら住むには安くない街なんです。BBCニュースのウェブサイトによると、2015年現在で、シドニーは世界で5番目に物価が’高い’都市だそうです。ちなみに、東京は世界11位。実感はあります。サンドイッチがテイクアウトで700円から1000円しちゃうような街です。でも、お金をかけないでお出かけを楽しむことは出来ます。

 

それは、市役所であるCity Of Sydney のおかげ。官として、市民の為に如何に楽しめる街にしてくれているかが大きいのです。このパワフル市役所の所以は、各政党が選挙に勝つために口だけ又は目先の政策を立てがちな連邦政府に対し、City Of Sydneyには、影響力大、市民からの支持力大、の長期在職している市長がおり、市民第一の長期展望をしっかりと持っており、そのリーダーシップを軸にした政策実行力と実行するための予算があるからなのでしょう。

 

では、街中と中心から4キロ圏内でお金をかけないで楽しめる、シドニーのおそとをご紹介。
sydney_1

シドニーの街では、市役所が主催または協賛する文化的なイベントが年中催されます。その多くは無料です。結果、観光客のみならずシドニー界隈の住民をも引き寄せて経済効果を上げ、地元の経済をうまく活性化しています。

 

2015年の2月のチャイニーズニューイヤーを祝うイベントでは、その一環として、秦の始皇帝陵の兵馬俑を模したランタンアートの作品が、シドニーっ子ならだれもが好きなシドニーハーバーの中心で展示されました。この兵馬俑は北京オリンピックの折、北京で展示され、それ以来、海外数都市でも展示されてきました。そしてオーストラリアに初めて上陸。この10日間の無料展示は、シドニー人にとっても観光客にとっても、かなり話題のイベントとなり、大勢の観覧客や市民が集まりました。
sydney_2
sydney_3

 

3月1週目の土曜日の晩は、ゲイ・レズビアンの祭典の目玉イベント、Mardi Grasパレードです。いろいろなゲイ・レズビアンのグループ、または支援するグループが参加するパレードで、市役所も協賛。市長さんもお祭り気分で、お金のみではなく、体でもしっかり奉仕しての参加です。
sydney_4

 

その他のパレード参加グループは、医者と看護婦、政党、消防士、ライフセイバー、ゲイやレズビアンの子供を持つ親のサポートグループ、スポンサー、同国出身者同士の集まり、なんと警察官等。各々のグループがパレードの車に大きなスピーカーを搭載して、クラブ系音楽と共に、それぞれの衣装に身をつつみ、踊りながら歩くのです。パレードのために通行止めされた、2kmほどの大通りを。沿道の観客は口笛を含むあたたかい歓声をパレード参加者に送ります。

 

見る側も、参加する側も、お祭り気分。世界中からの観光客、地元民もお昼過ぎから沿道に陣取りして楽しみます。私も毎年観客として、沿道から楽しませてもらっています。
sydney_5
sydney_6

 

期間限定イベントだけがシドニーの楽しみではありません。無期限で街中に設置された物を発見するだけでも、シドニーのおそとを楽しめます。例えば、シドニーの中心地の裏路地に入り込むと、市役所が設置したアートを見られます。宙吊りの数々の鳥かご。圧巻です。
sydney_6

 

シドニーでは街のあちらこちらにアートが点在。スマートフォンの地図を見ながら、市役所設置のアートを探して歩くのも楽しいです。市役所運営のウェブサイト「City Art」内の地図には、彫刻から壁に書かれたストリートアートまでの位置がポイントされていて、その数の多さに驚かされます。

sydney_8

この建物もしっかり市役所主導で設置されたアート作品。Tailor Squareというゲイの人たちのたくさん住んでいるエリアならではのカラフルでファンキーなペイント。見て歩くには楽しいです

 

Custom House Square は、砂岩でできた歴史的な建物Custom House前の広場。そこでは市役所から許可をもらった会社が、日替わりで、ちょっとした無料サンプルを配ったり、PRのための何かしらの造形物を設置したり。広場の利用金額は不明ですが、有名な企業によるお金のかかったPR物が常に登場するので安くはないと思われます。イースターの時には、習慣として食べるホットクロスバンというパンでできた家が突然一日だけ姿を現しました。なんだなんだと集まってきた人たちにパンを配りながら、ネット予約ができるお宿サイトの広告でした。
sydney_8
sydney_10

 

その翌日になると、同じ場所にはもう家の姿はなく、あったのは近郊の観光地Blue Mountains の観光ロープウェイの会社による路面PRの絵。目の錯覚を利用して、絵の中に立った人がブルーマウンテンの景観の中に豆粒大にうつるという不思議な絵。こんなふうに市役所の広場利用代徴収システムのおかげで、通勤や通りがかりの市民や観光客が無料で、日替わりで楽しめるスポットもあります。
sydney_11

 

街の中心や、郊外に向かう道で見逃せないのは、自転車専用路線が歩道と車道の間にある事。これは、そもそもスポーツとして自転車を楽しむ熱心なサイクリストが、市役所に安全の為の自転車専用路線設置を要求し、革新的かつオープンさで定評のある市長さんが聞き入れたのが始まりらしい。
sydney_12
sydney_12②

 

2007年に計画書が出され、2009年に初めて市内に200mの自転車専用路線設置。それ以来、設置が進むにつれ、公共交通費の値上がり(2015年4月現在、電車は初乗り400円!)、環境保全意識の高まり、サイクリストを見た人が触発され乗り始めるなど、いろいろな要因が絡みシドニーの自転車人口は急増。

 

市役所の統計によると、趣味ではなく公共交通の代替としての利用がこの3年で2倍に増えたとのこと。しかもレジャー目的ではないこのような自転車人口は、他の州と比べると2倍だそう。シドニー市のホームページも急速に増加しつつあるサイクリストを支持すると表明、実行。その結果、全てをつなぎ合わせると自転車専用路線は200kmに。見やすい道標の設置も充実していて、サイクリングのモチベーションが上がります。週末にはグループでいろいろな街にお出かけする有料自転車ツアーなんかを催行している会社もあるようで、おそろいのヘルメットをかぶったグループを見かけることもあります。
sydney_13

 

街の中心から4kmの、Sydney Parkの一角には、市民が安全に自転車に乗る為のスキルを身につける目的でつくられたCyclewayという名前の小さい道路公園があります。ここでは市民の為に自転車教室が開かれたり、子供たちが家族に見守られながら自転車で遊んだり。公園は緑が深くリラックス。都会においては喧騒から逃れられる最適な場所です。
sydney_14
sydney_15
sydney_16

 

でもシドニーを歩いていて感心するのは、大都市なのに住宅街にも緑が多い街である点。これもお役所の賢い政策のおかげでしょう。シドニー市役所は、年に1回、このSydney Parkの公園の一角で、街の緑化を推進するために各家の庭に植えたり植木鉢で育てたりするための植物を無料で配布しています。
sydney_17

 

木が増えることでCO2の削減、雨が降った折に植物と土が水分を保持するため無駄に水が排水溝に流れるのを防ぎ、また夏には気温の上昇を防ぐ効果もあるとのこと。この植木をもらうためにSydney Parkに来て、その横に併設されたボランティア団体の人が募金集め目的(1ドルか2ドルかは任意の募金)で作ってくれる、安くて美味しいバーベキューをほおばるのも楽しい。バーベキューでお腹が一杯になり、癒しの植木を無料でもらうということで、心も同時に満たされます。
sydney_18
sydney_19

 

このようにオペラハウス、ハーバーブリッジといった観光スポット以外にも、市役所のお仕事ぶりのおかげで、シドニーではお金を使わないお出かけを楽しむことが可能です。