あらゆる子どもが楽しめる公園づくり ~みーんなの公園プロジェクト


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    2013年6月28日

とだがわこどもランド(愛知県名古屋市)※

「身近な公園を、あらゆる子どもたちがもっと楽しめる場に」。そんなユニバーサルデザインの公園づくりが、少しずつ広がろうとしています。国内外でユニバーサルデザインの公園を調査している“みーんなの公園プロジェクト”発起人の矢藤洋子さんにお話を伺いました。

※この「水あそびゾーン」はせせらぎを渡る3つのルートが設けられています。写真手前から、車椅子で渡れる木の橋、奥に段差を越えていくのが楽しそうな四角い石のルート、更に奥にはなだらかに均された、車椅子やベビーカーでそのまま横断できる浅瀬ルート。あらゆる人がそれぞれの楽しみ方で渡る工夫がされています。

ユニバーサルデザインの公園って?

 あらゆる人が利用できる公園――。どんな公園か想像できますか?今回お話をお聞きした“みーんなの公園プロジェクト”は、「あらゆる子どもたちがもっと楽しめる場に」という公園づくりの調査活動をおこない、自治体などへ提言しています。プロジェクトが目指すのは、障がいのある子もない子も、よちよち歩きの小さな子も、ベビーカーを押すお母さんも利用できる、ユニバーサルデザインの公園。例えば、ひとつの遊具でも、スロープで、はしごで、ネットで、ロッククライミングで、いろんなルートで上がってくる友だちとてっぺんで集合するような…。音がする、触って気付く、見て面白い、感覚を刺激する遊びがいっぱいあるような…。少し遊具に工夫するだけで、いろんな友だちと一緒に遊べます。なんだかワクワクしてきますよね。

地上からスロープで上がるルートに加え、周りの地形を利用して周囲に巡らせた歩道から2階のデッキにアクセスできる複合遊具(ミルストーンクリークパーク/アメリカ)

服部緑地
服部緑地

赤や緑に光るパネルにふれたりキックして遊ぶ、音と光を使った電子遊具。ひとりでも遊べるほか、2人で協力したり、チームで競ったりと遊び方も多様です(ミルストーンクリークパーク/アメリカ)

障がいを持つ子も一緒に遊べるのは当然という考え方

 矢藤さんがこのプロジェクトを立ち上げるきっかけとなったのは、2004年。ご主人の仕事の関係で、アメリカに10ヶ月ほど住んでいたときのことです。そのときに目にしたのが、障がいの有無に関わらず、みんなが一緒になって楽しめる公園づくりを目指しているNPOの記事でした。そもそも矢藤さんは特別支援学校の教員だったこともあり、障がいを持つ子どもたちを公園に連れて行っても遊び場が少ないということを、身をもって経験していたのです。
 「従来型の公園に連れて行っても、障がいのある子は離れた場所から、遊具で遊ぶほかの子どもたちを見つめることしかできませんでした。でもその記事を見て、『障がいのある子が一緒に遊ぶことができないのは仕方ないことなんだ』と私が決め付けていたのではないかなと、はっとさせられました」。その記事で紹介されていたのは、障がいのある子も一緒に遊べるのが“当然”という考えだったのです。矢藤さんはさっそくその考えが取り入れられた公園を実際に見に行き、調査をはじめました。そして帰国後、2006年に立ち上げたのが“みーんなの公園プロジェクト”なのです。

ニューヨーク・ロングアイランドでは、NPOと地元ナッソー郡が協働して取り組み、5年がかりで夢の公園を実現しました。芝地や樹木をたくさん残すこの公園では、ほとんどの遊具が車いすで利用可能。さまざまな工夫が施され、あらゆる子どもたちが生き生きと遊んでいます。(LATCPプレイグラウンド/アメリカ)

海外で進む、ユニバーサルデザインの公園づくり

 矢藤さんによると、ユニバーサルデザインの公園づくりが最も盛んなのはアメリカ。この国では、ADA(障がいを持つアメリカ人法)が1990年から施行されているように、障がい者の差別をなくそうという意識が根付いているからです。遊具メーカーも、障がいのある子どもたちが遊べる遊具の開発に積極的だそう。例えば広い砂場のなかに、歩道からつながった出島のような一角を設け、車いすの子どもたちもそのままアクセスできるようにした場所を設置。出島の周囲にはショベルカーを操作する感覚で砂を掘って遊べる遊具や、クレーンですくい上げた砂をためて遊べる砂場台、またその砂を下に流し落とすパイプなどがあります。さまざまな遊具が組み込まれたプレイデッキにスロープを渡し、車いすでも安全に楽しめるような複合遊具もあるそうです。

車椅子に乗ったままでも砂遊びが楽しめる台が設置された砂場。子どもたちがみんなで一緒に遊んでいる姿が目に浮かびます(左:ブレンダンズビレッジ/アメリカ、右:ロータリーパーク/アメリカ)

 さらに最近のアメリカの傾向としては、地域の人たちが公園づくりに積極的に参加する、“コミュニティ・ビルド”という手法が採用されるようになっていること。ノコギリやカナヅチを持って公園づくりの一部をお手伝いするので、自分たちの作った公園という意識が高まる効果があるようです。

 一方、オーストラリアでは、まず最初にビクトリア州がユニバーサルデザインの公園づくりに取り組むための指針を出したほか、クイーンズランド州でも取り組みがはじまりました。オーストラリアでは、試行錯誤をしながら手作りでいろんな遊具が生み出されているため、次々と個性的な公園が生まれています。ブランコにしても、例えば腕の力で漕ぐブランコ、車いすに乗ったまま利用できるブランコ、タイヤのようなゴムで背もたれシートがついたブランコなど、多種多様。いろんな子どもがいろんな遊び方をできそうですね。こちらも地元の人たちが熱心に、それぞれの公園づくりをおこなっているそうです。

左から:手の力だけで漕ぐことができるブランコ(パイオニアパーク/オーストラリア)、車椅子のまま乗ることができるブランコ(マディズプレイグラウンド/
オーストラリア)、自分で体重を支えることができない子も乗ることができる、背もたれ付きのブランコ(オールアビリティズプレイグラウンド/オーストラリア)

日本の公園にも少しずつ広がっています

 矢藤さんたち“みーんなの公園プロジェクト”では、現在国内外の公園を調査し、ホームページやfacebookなどで報告する活動が主。「日本ではまだまだそういう公園があるってことすら認知されていませんね。障がいを持つ子のお母さんとお話をしても、『そもそも公園に行っても遊べないから行かない』という方が多いです。でも実は海外にこんな公園があるということを紹介すると、急にみなさん目が輝き出すんです。『そんな公園あるならぜひ行ってみたいわ』って。みなさんまだ知らないからニーズとして現れていないだけ。もっと広めていきたいですね」。
矢藤さんたちの努力の成果か、日本でもようやく少しずつですが、各地でいろんな方が動きはじめたところだといいます。ある県では、矢藤さんらの提言を一部採用した公園もできました。

 すべての子どもはそれぞれの力を持っています。その力を生き生きと発揮できる場であり、様々な友だちと一緒になって遊び、学べる公園。それは多様な人が自然に関わり合い、お互いを理解する場になるかもしれません。これからそんな公園が日本でも更に広がっていくことが期待できそうです。

車椅子に乗ったまま操作できるウォーターガン。大喜びで遊ぶ子どもたちの歓声が聞こえてきそうです(兵庫県淡路市/国営明石海峡公園)

車椅子がはいることができる段差を設けた砂場。くぼみに入って遊ぶ子どももいるなど、多様な遊び方ができるのも魅力です(愛知県名古屋市/とだがわこどもランド)

みーんなの公園プロジェクトホームページ
>http://www.minnanokoen.net

Facebook
>http://www.facebook.com/minnanokoen

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