自分たちの手で変えたら、まちも活気づく。 ~活気ある公園づくりプロジェクト


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    2013年6月28日

地域の人たちが意見を出し合い実施された『公園ではできない遊びをやっちゃおうプロジェクト』。「手作りダンボール迷路」を解体したのち、水風船合戦中。

「まちのなかにある“小さな公園”は、『みんなの場所』。本当は素敵な場所のはずなのに、みんなが気持ちよく、楽しく使いこなせていないのでは?」。そんな疑問を抱いたことからはじまり、平成22年より3年間かけて、みんなで取り組んだ福岡市の共働事業があります。その名称は、『活気ある公園づくりプロジェクト』。日本の多くの公園のためにも、活動の中心となったNPO九州コミュニティ研究所の方々に、OSOTOがお話を伺いました。その内容や成果とは?

良くするには、良く知る。

 「みんなが笑顔で使える素敵な場所になるよう、みんなの手で公園を変えよう」。NPO九州コミュニティ研究所とNPOデザイン都市・プロジェクトが、“小さな公園”について考えはじめたことがきっかけとなり、地域の人と行政が一緒になって実施した事業が『活気ある公園づくりプロジェクト』です。「最初は何から手をつけたらよいのかわかりませんでした。ですから、使われていない理由を知るために、公園を一つひとつ採点することからはじめました。そこから何かが見えてくるんじゃないかな、と」とは、実行委員長を務めたNPO九州コミュニティ研究所理事長の耘野(うんの)康臣さん。
 採点をおこなったのは、福岡市南区にある125の“小さな公園”。採点の指標は、都市公園の分析マニュアル(国土交通省発行)に書かれている4つの機能をベースにした、「遊び指数」「憩い指数」「清掃指数」「植栽指数」「施設整備指数」、そして地域づくりや公園利用の活性化につながる「個性指数」です。加えて公園の印象や聞き取り内容なども書き込める調査シートを作成し、異なる人の目視による調査を平日と休日の2回おこないました。「採点はあくまで私見です。でも、そういう視点でみんなも公園を見はじめてほしいという狙いもあったんです。あいまいなジャッジですが、それでも、やって正解。この調査がプロジェクトの基盤になりました。公園が生活に全く浸透していないと改めて知ることにもなったし、その理由が公園ごとに違うこともわかって。そこから、地域の人たちのことや、地域にあった公園でないと使われないことがわかってきたんです。なので、1年目は、考えて、調べて、考えて、調べる年でしたね。本当に良くしようと思ったら、良く知ることが大事なんですよね」と耘野さん。公園の管理者である行政の人たちも「ミッションというよりは一緒にというスタンスで、味方になってくれた」という積極的な関わりも手伝って、「良くするには、良く知る」という、大事なことが発見できた成果のある一年となりました。

好きな向きで座って木陰で休息できる円型のベンチの設置により、「憩い指数」で高い評価を得られた公園。

地域の人による定期的な清掃活動がおこなわれる公園は、自ずとゴミを捨てる人も減り、利用しやすいことから、「清掃指数」が高い。写真は家庭ゴミが散乱する公園…。

服部緑地

“地域に住んでいない”プロジェクト実行委員による調査風景。自分たちの公園を活気づけるためには、“地域に住んでいる人たち”で1時間ほどかけて年2回おこなうことが理想とのこと。

服部緑地

カメの遊具は、ある時期から増加したとか!?この存在により通称「カメ公園」と呼ばれる確率が高いことを調査により発見。遊具が公園の印象をアップ!?

地域の人が、前向きに話し合う。

 2年目は、ワークショップを通して公園を変えていくことが目標。調査の結果、評価の高い公園は、公園での地域活動を自発的におこない、利用度も高く、関心を持っている人たちが多いとわかりました。このことから、あまり評価されなかった公園をより良くするヒントを得るために、評価の高い3公園でワークショップを実施することに。採点の報告会を兼ねた一回目には60名が参加した公園もあり、集まった人たちによる、利用の問題点や希望する活動の話し合いにはじまり、実際の活動の打ち合わせ、実施、振り返りという四段階で進めていきました。司会進行役は、まちづくりの経験が豊富なNPOの面々。
「目的は、地域住民のための公園に戻すこと。地域に活動を根付かせていくことが大事なので、まずNPOという公平な立場の僕らがしっかりサポートしつつ、行政の人と地域の人とともに一緒にやっていくことを大切にしました。僕らと地域の人たちが一緒に、地味でもいいから状況を変えていき、僕らが抜けてもやっていけるノウハウを築いて、次へとつなげる。そうすることで公園の個性が出てくると思うので」と耘野さん。「公園は、そこに住んでいる人の場所。だから、僕らが勝手にやっても、いいことないですから。一番やってはいけないことは、僕らがお金を使って全力でイベントをやることなんですよね。それでは、公園は全然よくならない」とは、同NPOの副理事長であり、まちづくりのワークショップを得意とする尾方孝弘さん。そのため彼らは、ときには提案するものの、何をすれば公園が良くなるかを話し合うワークショップでは、司会進行役に徹しました。その甲斐があり、他の人の意見を否定することなくアイデアを出し合うという前向きな話し合いができたのです。

校区内全戸配布によるアンケート調査を元に、ルールづくりをおこなったワークショップの様子。

変えようと思えば、変えられる。

 話し合いを重ねに重ね、実施された3つの公園の活動は、『公園からはじまる健康づくり』『公園ではできない遊びをやっちゃおう』『公園のドッグ・ルールづくり』。三つ目の活動については、「積極的な活動をしているものの、公園でのペットのマナーの悪さが課題として挙げられていた校区だったので、犬のマナーのための看板を設置しました。みんなで内容を考えたことで、自分たちが作ったという気持ちが強くなり、公園自体も自分たちのものという意識に完全に変わっていったように思います」と同NPOスタッフの池田祐介さん。この看板は今も設置され、ペットマナーの向上に役立っています。そのほかの活動も、彼らNPOが抜けた今でも、地域住民によって内容に多少の変更を加えつつ継続されているとのこと。

蜻蛉池公園

『公園のドッグ・ルールづくりプロジェクト』の活動での看板設置の様子。デザインも地域の人たちが積極的に検討を重ねたとか。

蜻蛉池公園

『公園からはじまる健康づくりプロジェクト』では、インストラクターを招いての講座を含むイベントを開催。写真は、遊具を使ったステップ運動の実施。

 集大成としてプロジェクトをまとめた『住民による活気ある公園づくりの参考書』も発行。そこには、活動の詳細や調査シート、クリエイターによる公園のアイデアなどが全184頁にわたり紹介されています。読み物としても面白いこの参考書は、全国どこの公園でも使えるようにとまとめられたもので、公園を良くしたいと思うすべての人におすすめ。「公園をどう良くするかを話すことだけで、地域の人同士のコミュニケーションが生まれますし、それがまちづくりにもつながりますよね。公園はみんなものだから、変えようと思うと、変えられるんです。ちゃんと結果が出る。そういう意味で、まちづくりの参考書にもなると思います」とは尾方さん。「公園が活気づくことは、地域全体が活気づくことだったんだなぁと改めて理解しました。地域の活気は、公園が担っているんですよね。このプロジェクトにより、公園に行く機会が増えたり、ゴミを拾うようになったりと、ものすごく小さなことだけど、みんなに変化が起きています。みんなが公園を日々考える、そして愛着を持つようになるというのは、すごく重要な気がします。すぐ身近にあるものだから、なおさら」と耘野さん。現在は、3年間のプロジェクトを終え、次のステップとして、公園のゴミ問題に企業と取り組み、また、他のエリアでも公園の活気づくりを実現する仕組みを模索しています。

 疑問を抱くことがあれば、少し意識して、少しずつ取り組んでみる。この“小さな公園”を活気づけるプロジェクトは、私たちみんなに、「公園は、自分たちの場所であり、自分たちの場所は、自分たちの手で変えることができる」というとても大きな事を教えてくれているのではないでしょうか。

福岡市を中心に、企業に勤める人たちによるボランティア活動日「勤マルの日」に、「活気ある公園づくりプロジェクト」も公園の一斉清掃を企画して参加。参加申し込みは100名。但し、当日は雨のため中止。写真は、後日おこなった。メンバーによる落書き消し実施の様子です。

『公園ではできない遊びをやっちゃおうプロジェクト』で人気だった手作り遊具は、樹木や既存の遊具にロープを渡す「モンキーロープ」。通常は問題視される不安定さに子どもたちは大興奮。

活気ある公園づくりプロジェクト
>http://fukuokapark.jp/

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